2008年度の国内の温暖化ガス排出量は、景気低迷による企業の生産縮小などから、12億8600万t-CO2と前年比で6.2%減少し、1990年度比では1.9%の増加となった。2009年8月、今後の新エネルギー政策の在り方について検討してきた総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会が、「最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を2020年ごろに20%に引き上げる」という目標を目指すべきとする、新エネルギー部会中間報告を発表した【*1】。同じく8月には、長期エネルギー需給見通しの再計算が発表された【*2】。
2009年7月に成立した「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」は、電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対して、太陽光、風力等の再生可能エネルギー源、原子力等の非化石エネルギー源の利用や化石エネルギー原料の有効な利用を促進するために必要な措置を講じることとしている【*3】。2009年11月に開始された太陽光発電による電力買取の義務付けの他、石油事業者、ガス事業者にバイオ燃料、バイオガスの利用を義務付ける。特定のエネルギー供給事業者(石油事業者300万㎘以上、ガス事業者120万t以上)へ義務付けるほか、一定規模以上のエネルギー供給事業者(石油事業者ではガソリン供給量60万㎘以上、ガス事業者では供給量900億MJ以上)に計画作成・提出を義務付け、取り組みが不充分な場合には勧告・命令を行うとしている。
2009年6月、「バイオマス活用推進基本法」【*4】が成立し、同法により政府に「バイオマス活用推進会議」が新設されることになった。また、バイオマスタウン構想を発表した自治体は、2010年1月末時点で、224地区225市町村となった。
2009年、秋田、北海道、兵庫県の三か所でバイオ燃料地域利用モデル実証事業による工場が建設され、これまでに建設された施設を含め、2011年に5万klの生産を目指す。
2009年2月、民間6社は、セルロース系バイオエタノールの一貫製造技術に関する研究開発のための「バイオエタノール革新技術研究組合」の設立を発表。新日本石油は、関東圏1026カ所の系列サービスステーションでバイオエタノールを混合したガソリンの販売を開始。バイオマス燃料供給有限責任事業組合(JBSL)が北海道バイオエタノールとオノエンホールディングスから国産のバイオエタノールを初購入するなど、バイオ燃料利用の取り組みが進められた。なお、農水省によると、近年の国産バイオエタノールの生産量は、2006年に30㎘、2007年に90㎘、2008年に約200㎘である。
政権交代によって登場した鳩山政権は、2020年に1990年比GHG排出量25%減と、前政権の出した2005年比15%減の目標から大きく踏み込んだ目標を掲げた。2010年の通常国会には、「地球温暖化対策基本法案」他エネルギーや環境関連の14法案の提出を予定している。地球温暖化対策基本法案の基本的施策には、「キャップ&トレード方式の国内排出量取引制度の創設、地球温暖化対策税の検討その他税制全体の見直し、(再生可能エネルギー電力)固定価格買取制度の創設」が盛り込まれる見込みである。なお、国内のクレジット制度としては既に「国内クレジット制度」および「J-VER」の導入が始まっている【*5】。電力業界などの抵抗も強いが、これらの政策の適切な導入は、今後の日本の持続可能な社会システムへの移行に不可欠であろう。
*1 http://www.meti.go.jp/report/data/g90831dj.html
*2 http://www.meti.go.jp/report/data/g90902aj.html
*3 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/koudoka/index.htm
*4 http://www.maff.go.jp/kinki/kikaku/baiomass/katuyousuisin-kihonhou.html
*5 詳しくは、http://jcdm.jp/ , http://www.4cj.org/jver.html を参照のこと。
政権交代後間もなく、再生可能エネルギー電力全種・全量固定価格買取制度(FIT)の検討が始まった。2009年12月に行われた再生可能エネルギーの全量買取に関するヒアリングで、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長の泊みゆきが行った説明は次の通り。
1) バイオマスはボードやパルプなどマテリアル等他の用途にも利用可能であり、それらとの競合について配慮すべき
2) すでにRPS法対応のため、電力会社は輸入バイオマスの利用を始めている。日本が輸入している木材の2割程度は違法伐採木材と言われており、特に輸入バイオマスの持続可能性に配慮すべきである。具体的には改正グリーン購入法の援用、バイオ燃料の持続可能性基準の援用、独自の持続可能性基準の策定などが考えられる。
その他、バイオマス利用には地域での適切な利用や熱利用との住み分け、輸送や発電効率などトータルでの温暖化ガス排出削減効果等、考慮すべき点は多い。十分な検討にもとづく適切な制度設計が求められよう。
* 詳細は http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g91210aj.html 等を参照のこと