はじめに『全体像を描きながらバイオマスの配置を考えること』

2009年8月の総選挙で民主党は300を超える議席を得て、政権交代が実現した。新政権は、2020年に温暖化ガス25%減の目標を掲げ、再生可能エネルギー電力全量買取制度や森林・林業再生に向けての政策などを矢継ぎ早に打ち出している。

パブリックコメントへの意見提出(コラム6参照)などそれらに対応しながら感じたのは、政策立案において、全体像を描きながら配置することの重要性である。

木くずやワラなどのバイオマス【*1】のエネルギー利用では、熱利用が最も経済性が高く、小規模でも高い利用効率が可能で、化石燃料代替効果も高い。では、バイオマスはとにかく熱に使えばいいのかと言えば、それもまた違うであろう。バイオマスは再生産可能だが、(特に環境や社会的に問題のない持続可能なバイオマスは)利用可能な量に限りがある。バイオマスは、薬用・食用・マテリアル(素材)利用・飼料・肥料・電力・液体燃料等にも利用可能な資源である【*2】。他の再生可能エネルギーと比べると、マテリアル利用が可能なこと、運搬や備蓄がたやすいこと、電力に使う場合、需要に合わせることも一定の出力で発電することも可能であるという、重要な特長がある。

一方の熱では、断熱、廃熱、太陽熱、地中熱、地熱なども、それぞれ条件はあるが利用可能である。バイオマスの熱利用は、これらでまかなえない部分を中心に配置していくべきであろう。

政策がばらばらに立案されると、ある特定のバイオマス資源をダブルカウント、トリプルカウントするおそれがあり、注意が必要である。例えば同じ地域から出る木くずを、別々のバイオ燃料製造施設やバイオマス発電施設で利用する計画を立て、実際に利用しようとすると資源が集まらないといった現象である(さらにボード原料や製紙原料などマテリアル利用や、飼料・肥料利用と競合する場合もある)。

化石燃料に頼らない持続可能な社会システム像を描き、それに向かって進まなければならないが、その社会ビジョンにおいて、限りあるバイオマスをどのように使うべきなのか、経済性や時代の変化なども含め複雑解ではあるが、こうしたことを念頭において利用を考える必要があるのではないだろうか。

個人的には、当面のバイオマス利用のポイントは二つあると考えている。一つは、地域の資源活用による持続可能な地域づくりのための意識改革やシステム構築への具体的手段として位置付けることである。もう一つは、樹皮や剪定枝、可燃ごみ、家畜糞尿や生ごみなどの利用の徹底である。どのような利用が適切かは、地域によっても異なり、試行錯誤も続くだろう。もちろん、特集で取り上げたように林業の再生も非常に重要である。

こうしたことを心に留めながら、今年も持続可能なバイオマス利用に向けて活動を行っていきたい。

<NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき>