8. 日吉町森林組合の取り組み

今後の日本の民有林管理の一つのモデルとなりうるのが、京都府の日吉町森林組合などが行っている「提案型集約化施業」である。ドイツなどのフォレスター制度で行われている地域の森林管理システムとも共通する。

日吉町森林組合では、22名の従業員(平均年齢36歳)のうち、日吉町出身者は3〜4人で残りはいわゆるIターンである。全国的な傾向だが、日吉町においても民有林所有者の高齢化が進み、後継者はサラリーマンが多く、不在所有者も増えている。大半の所有者は森林に対する知識はなく、過密に植えられた人工林を適切に間伐するなどの施業の必要性すら知らない。こうした状況では、専門家が森林を見回って適切な施業内容を見積もり提案しない限り、森林は荒れる上に所有者の利益も守れない。

そこで日吉町森林組合は、町内の森林面積の約95%について所有者と管理契約を結び、5〜50ha程度の番地ごとの所有者を航空写真や実地調査で確認し、施業する団地(間伐作業などをまとめて行う一定の区画)を設定する。間伐材の売り上げで(所有者の)負担金なしで間伐できる見込みが立てば、現地説明会を開く。個々の所有者ごとに森林施業プラン(図6)を作成し、所有林の現状、間伐計画、販売数、販売価格、作業コストなどを見積もり、負担金ゼロもしくはいくらかの返却額(収入)を提示すると、ほぼ所有者の了解が得られる。

低コスト作業でなければ、補助金を使っても負担金が生じ、所有者の同意が得られない。低コスト化には機械による高効率作業が必要であり、機械を入れるには路網と集約化が必要となる。日吉町森林組合では、こうした状況に正面から向き合い、対応するための工夫・改善を繰り返し、「山から木を降ろすしくみ」をつくりあげていったのである。

図6:日吉町森林組合の森林施業プラン

図6:日吉町森林組合の森林施業プラン

作業手順としては、事前調査、森林施業プランづくり、所有者の承諾を経て、作業道開設を行う。ハーベスタで道そばの木を伐採し、届かないところはチェーンソーで切り、木をつかんで玉切り(材を一定の長さに切る造材作業)する。玉切りした材を運搬車に乗せて降ろす。山土場で所有者別に、ラミナ(集成材となる板材)、合板、チップ(パルプ用)などに仕分けする。最後に道を整える。6〜10年後、再び間伐を行うが、今度は道があるため、収入が期待できる。今の40-50年生が100年生になるまで、繰り返す。道があれば、その先の造林もやりやすい。完了報告書を作成し、所有者に渡す。

このように生産性を上げるため、日吉町森林組合では、工程をどう改善していくか工夫を重ねている。日吉町森林組合では、そのために従業員のモチベーションを高めるべく、通常の作業班(半雇用)ではなく、正規従業員として雇用している。

林野庁は2007年より各地の森林組合職員を対象に、日吉町森林組合で3泊4日の森林プランナー研修を行っている。一方、①研修内容は、森林、路網、作業システム、コストと工程の管理、マーケティング等多岐にわたるが、研修員の知識が不足している。特に、低コストのコンクリートを使わない作業道づくりは自然の摂理に合わせてつくる必要があり難しい ②受講組合の経営層が本気でない ③作業班制度が大半であるため、コストや工程管理の洗練化に限界がある といった課題も浮かび上がっている。

作業道開設作業

作業道開設作業

間伐作業(ハーベスタ)

間伐作業(ハーベスタ)

間伐作業(チェーンソー)

間伐作業(チェーンソー)

伐採後

伐採後

造材作業

造材作業

間伐材の搬出

間伐材の搬出

山土場での選別作業

山土場での選別作業

施業完了

施業完了

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