NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
トピックス
トピックス
2004年の動向
関連情報

 

(1)本格化するバイオマス利用への取り組みだが
 いよいよバイオマスにかかわる動きが本格化してきた。下の表に示したように、様々な分野で数多くの取り組みが始まっている。しかし一方で様々な問題もいよいよ顕在化してきた。
 現在、積極的な取り組みが行われているものとしては、発電・熱などのエネルギー利用分野、バイオエタノール、バイオディーゼル燃料など燃料としての利用分野、マテリアル利用分野等がある。それぞれ別項に詳細が記されているので、ここでは共通の課題を取り上げてみたい。

(2)軽視されてきた入口と出口
 バイオマス利用に立ちはだかる壁とは @コスト、A資源収集システム(ロジスティクス)、B利用の効率化(熱利用等の不足)、C行政・手続きの壁、品質規格・安全性基準の不整備等などのマネジメントに関わる問題 である。
 それぞれ重要な問題であるが、誤解を恐れずに一言で言えば、「いわゆる変換部分(プラント等)の技術への関心が高いが、入口(資源収集)と出口(利用先)の問題及びマネジメントは比較的軽視されてきた」というところに尽きるのではないだろうか。これは、技術開発を軽視するものではなく、バランスの問題である。変換部分にいくら補助金・交付金をつぎ込んでも、入口と出口の効率が悪ければプロジェクトは動かない。これは、最近計画中のバイオガスプラント案件で、既に資源収集ルートが確立されており、しかも熱などの利用先が確定しているもの(主に都市部や工場団地の食品加工廃棄物利用)の採算性が、他に比べて抜群に(桁一つ違う)よいことからも明らかである。

 さらに、わが国のバイオマス利用が、コストなどの問題に直面する中で、苦しいながらも気を吐いているのが、菜の花プロジェクト等の、地域おこしにバイオマスを活用しているケースである。これらは、まちおこしの中で、入口と出口に多くの人々の知恵と熱意が結集しているから、トータルでプロジェクトの意義があるのである。地域や草の根での取り組みが必要不可欠であることの証左であるが、一方で当面、国や自治体の補助金や交付金抜きでプロジェクトを進めることも難しい。

 その中で今後注目されるのが、省庁横断型取り組みでもある「バイオマスタウン構想」であろう*1。最大の特徴は、自治体単位で自由にバイオマスタウン構想書を策定し、それを広く一般に公開し、補助金や交付金の獲得にリンケージしていこうとしている点である。入口(資源収集システム)と出口(効率的な利用)、マネジメントといったソフトな部分は、より多くの人々の知恵を集約すること、他の事例を参考にして丹念に改善していくことの積み重ね以外に、効率を上げることは難しい。
 情報の公開と全国的な情報交換のネットワークづくり、陳腐な表現だが、これが最大の近道なのではないだろうか。

〈バイオマス産業社会ネットワーク副理事長 岡田 久典〉

*1 http://www.biomass-hq.jp/biomasstown/index.html

表 主なバイオマス利用の種類と課題
種      類
具  体  例
主 な 課 題










自治体による一般廃棄物処理施設でのごみ発電 エネルギー利用されているのは、処理量の5割程度 発電効率の向上、熱の有効利用、木くずなど産廃の受入等
産廃処理業者や製造業による廃棄物利用
黒液利用、製紙工場でのバイオマス発電等
安定的な資源調達、小規模の機器・機器情報の不足、住民の反対





大規模 石炭火力発電に数%程度、間伐材や竹材を入れて混焼。RPS法対応。 中国電力、四国電力、電源開発等 原料の収集システム確立、コスト高
中規模 中規模のバイオマス発電・熱供給施設 能代森林資源利用協同組合、銘建工業等 売電価格が低い、送電費用が高い、逆有償資源の運搬
小規模 チップボイラー、ペレットストーブ、薪ストーブなど 岩手県、長野県、大阪府森林組合、東京ペレット等 灰の処理、輸入ペレットとの競合





サトウキビ、トウモロコシからの生産 ブラジル、米国等 作物の可食部分も利用
建設廃材などからの生産 日揮、月島機械等 原料収集、インフラ整備、免税処置
廃糖蜜など農業廃棄物などからの生産 沖縄県

Wet

食品加工廃棄物 ビール会社、井村屋など 初期投資が高い
生ごみ 白石市、滝川市、横須賀市 分別収集、生ごみの選別
下水汚泥 横浜市、山形市、森ヶ崎(東京都)等 汚泥だけでは熱量が少ない
家畜糞尿 京都府八木町等 液肥の処理





菜の花プロジェクト、バイオ・ディーゼル(BDF)利用 滋賀県、愛東町、横浜町、京都市ほか多数 栽培補助金獲得、回収ルートの整備、BDF加工技術向上など
生ごみのメタン発酵利用 埼玉県小川町 分別収集

JI
CDM

温暖化対策としての海外でのバイオマス利用 タイでのもみがら発電等 制度的確立






バイオマスプラスチック カーギル・ダウ社のポリ乳酸利用 EEP(鶏卵パック適正利用協議会)、東レ、ユニチカ、カネボウ、クラレ等 トウモロコシが原料、国産化
その他 北九州市エコタウン、トヨタ自動車

原料調達、コスト

植物繊維利用 トヨタ車体 原料調達の国産化?
農業廃棄物、雑草、ホタテの貝殻、キチン・キトサンなど

ジーザック社、チャフローズ・コーポレーション等

マーケティング、コスト
作成:NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)

※すでに稼動中のものを主に取り上げたが、一部、計画・実証試験段階のものを含む。