(1)本格化するバイオマス利用への取り組みだが
いよいよバイオマスにかかわる動きが本格化してきた。下の表に示したように、様々な分野で数多くの取り組みが始まっている。しかし一方で様々な問題もいよいよ顕在化してきた。
現在、積極的な取り組みが行われているものとしては、発電・熱などのエネルギー利用分野、バイオエタノール、バイオディーゼル燃料など燃料としての利用分野、マテリアル利用分野等がある。それぞれ別項に詳細が記されているので、ここでは共通の課題を取り上げてみたい。
(2)軽視されてきた入口と出口
バイオマス利用に立ちはだかる壁とは @コスト、A資源収集システム(ロジスティクス)、B利用の効率化(熱利用等の不足)、C行政・手続きの壁、品質規格・安全性基準の不整備等などのマネジメントに関わる問題 である。
それぞれ重要な問題であるが、誤解を恐れずに一言で言えば、「いわゆる変換部分(プラント等)の技術への関心が高いが、入口(資源収集)と出口(利用先)の問題及びマネジメントは比較的軽視されてきた」というところに尽きるのではないだろうか。これは、技術開発を軽視するものではなく、バランスの問題である。変換部分にいくら補助金・交付金をつぎ込んでも、入口と出口の効率が悪ければプロジェクトは動かない。これは、最近計画中のバイオガスプラント案件で、既に資源収集ルートが確立されており、しかも熱などの利用先が確定しているもの(主に都市部や工場団地の食品加工廃棄物利用)の採算性が、他に比べて抜群に(桁一つ違う)よいことからも明らかである。
さらに、わが国のバイオマス利用が、コストなどの問題に直面する中で、苦しいながらも気を吐いているのが、菜の花プロジェクト等の、地域おこしにバイオマスを活用しているケースである。これらは、まちおこしの中で、入口と出口に多くの人々の知恵と熱意が結集しているから、トータルでプロジェクトの意義があるのである。地域や草の根での取り組みが必要不可欠であることの証左であるが、一方で当面、国や自治体の補助金や交付金抜きでプロジェクトを進めることも難しい。
その中で今後注目されるのが、省庁横断型取り組みでもある「バイオマスタウン構想」であろう*1。最大の特徴は、自治体単位で自由にバイオマスタウン構想書を策定し、それを広く一般に公開し、補助金や交付金の獲得にリンケージしていこうとしている点である。入口(資源収集システム)と出口(効率的な利用)、マネジメントといったソフトな部分は、より多くの人々の知恵を集約すること、他の事例を参考にして丹念に改善していくことの積み重ね以外に、効率を上げることは難しい。
情報の公開と全国的な情報交換のネットワークづくり、陳腐な表現だが、これが最大の近道なのではないだろうか。
〈バイオマス産業社会ネットワーク副理事長 岡田 久典〉