NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
2004年の動向
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2004年の動向
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(1)相次ぐバイオマス利用計画の策定
 千葉県では、生活環境部にバイオマス・プロジェクトチームを設置、廃棄物行政担当や林業担当者などバイオマス関連の部署から選抜された7名が専従で、バイオマス利用推進に取り組んでいる*1。県内のバイオマス利用事例や賦存量調査を行い、バイオマス総合利用マスタープランを策定。2004年9月には、バイオマス利用とLCA(ライフサイクルアセスメント)に関するセミナーも開催した。
 三重県で「バイオマスエネルギー利用ビジョン」、島根県で「バイオマス総合利活用計画」、愛媛県でも「えひめバイオマス利活用マスタープラン」がそれぞれ策定され、静岡県でも県としての具体策を探る「バイオマス利活用推進協議会」を2004年7月に発足し、学術、企業、NPOなどの担当者20人が委員となり、マスタープランの策定などにあたるなど、都道府県でのバイオマス利用計画策定が相次いだ。
 市町村においても、関係者や関心のある人を集めての「バイオマス研究会」が各地で開催され、バイオマス利用具体策についての検討が進められている。

(2)特色ある各地の取り組み
 木質ペレット利用推進で先行する岩手県は、2004年、自治体だけでなく一般家庭や企業がペレットストーブ購入資金を補助する制度を開始した。県のホームページでもペレットストーブのページを開設、県民の利用促進を呼びかけている*2。

 北海道滝川市の中空知衛生施設組合では、全国に先駆けて生ごみの分別収集と高速メタンガス発酵およびエネルギー利用を始めた。可燃ごみを廃棄物発電に利用しているが、水分量が多く発電効率を下げる生ごみを別途処理する必要性が生じた。生ごみ従量制によるごみ有料化で、4割近くごみ発生量が減るなどの対策もあわせて行っている。

 埼玉県小川町では、有機農業生産者らで組織したNPO「小川町風土活用センター(ふうど)」*3が約160万円をかけて生ごみ発酵プラントを制作。液肥は周辺の農家が畑に利用し、メタンガスは近くの家にホースで送られ、火力源として使われている。小川町のごみ焼却費は1kgあたり30円前後かかるのに対し「ふうど」なら、生ごみの処理費は12円ですむ。差額相当分を生ごみ収集に協力している世帯に、地場の野菜と交換できる3000円分のクーポン券として配り始めている。

 青森県では、経済構造特区制度ができる前から、バイオマス等の地域の再生可能エネルギー利用を検討。同制度ができると、すかさずバイオガスや風力発電などを組み合わせたマイクログリッドプロジェクトを申請し、認められた。補助金を利用して建設された下水処理場での売電のための発電機設置は、従来、目的外使用として認められなかったが、規制緩和の働きかけを行い、認められた。他にも、かつて誘致した工場の自家発電設備が残っていることを利用した地域発電システム構築や、カドミウムに汚染された米を原料とするエタノール製造を図るなど、「地域にあるものを使う」姿勢で次々にプロジェクトを立ち上げている。

 2004年10月、中国政府は国内の森林資源保全のため、木炭の輸出を全面的に停止した。日本の中国産木炭の輸入量は輸入量全体の半分以上を占め、特に備長炭として珍重される白炭の8割以上が中国産であり、市場への影響は大きい。和歌山県は紀州備長炭の増産のため、関係者との連携を強化した。
 また、福岡県添田町が、東京農工大の堀尾正靭教授と共同で竹粉を燃料とする「粉炭ストーブ」を開発するなど、日本国内の木炭関係者の動きが活発化している。
 また、2004年は、自治体、企業、NPO等によるバイオディーゼル利用が各地で軌道に乗り始め、イベントにおける発電機での利用や観光バスでの利用、鉄道での利用が検討されるなど、特色のある取り組みが行われている。
(詳細は、こちらを参照)

*1 千葉県バイオマス関連HP
*2 岩手県ペレット関連HP
*3 NPOふうど




 2003年1月20日に発足した千葉県バイオマス・プロジェクトチームの一員として、バイオマス資源の発生側と需要者側の情報をそれぞれ必要とする相手に的確に受け渡すことにより、県内におけるバイオマス利活用を推進している。
 バイオマスの仕事に携わってみて、県内において民間事業者を主体に、プロジェクトチームとして把握しているだけで、既に30事例を超える数多くの取り組みがなされていることに感銘を受けた。
 これらの取り組みの多くは、単一のバイオマス資源を利用する単独プラントであるが、最近お聞きする話の中では、地域における循環システムを視野に入れた構想も増えてきて頼もしく思っている。
 いずれにしろ、社会経済の中でバイオマスの利活用をごく当たり前のものにするためには、農業系、工業系そして商業系が連携し情報と知恵を出し合うことが非常に大切であると考える。
 バイオマス関係の皆さまには仕事に積極的に取り組まれる方が多く、そのような環境の中で一緒に仕事をやらせていただける楽しさ・喜びを感じる今日この頃である。

〈千葉県環境生活部資源循環推進課バイオマス・プロジェクトチーム 中野 裕三郎〉