NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
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2004年の動向
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(1)8割を輸入する日本の木材利用
 日本で現在、利用可能と見られているバイオマス資源のうち木質系バイオマスは、1/3を占める。日本の国土の67%が森林(うち約4割が人工林)であり、1960年代には、木材需要の9割近くを自給していた。しかし、1960年代の丸太の市場開放により急激に自給率が下がり、現在、木材自給率は20%以下となっている。
 日本の人工林蓄積は、3割が伐採可能な46年生以上だが、価格低迷や労働力の不足などから、年成長量の1/3程度しか利用されていない。また、間伐材切り出し費用はトンあたり8000〜1万5000円程度と高額であり、搬出費用がまかなえないために、間伐材を林地に放置する「切捨て間伐」も絶えない。
 大量の木材輸入は、違法伐採等に代表される「非持続的な森林伐採」による現地の生態系や社会への悪影響(詳しくは下のコラム参照)とともに、遠方からの輸送による環境負荷増大の問題も引き起こしている。米材や南洋材を多用する日本では、木材輸入量が日本より多い米国(輸入の多くはカナダから)に比べ、約4倍のウッドマイル(輸入量×輸送距離)を費やしていると計算されている*1。元来木材は、鉄鋼やアルミニウムなど地下資源に比べ、格段に環境負荷が少ないにもかかわらず、日本では長距離を輸送して利用しているため、エコマテリアルとしての価値が半減しているのである。

(2)持続的な木材/木質バイオマス利用推進のために
 こうした日本の「非持続的な」木材利用構造は、どのようにして改善しうるだろうか。
 国産材と外材は、必ずしも価格差がないケースもあり、国産材の流通やマーケティングの改善、グリーン購入による積極的な購入、ビルや内装の木造化、消費者への情報提供等の必要性が関係者によって指摘され、さまざまな取り組みが行われている。例えば、環境省が2004年に募集した環境政策提言の「優秀に準ずる提言」に選ばれた、オーガニックテーブル桝シによる「金融を利用した持続可能な森林木材流通と高品質長寿命住宅供給」*2では、
住宅金融公庫の既存の制度を利用し、川上の木材供給、川中の設計技術者・加工技術者、川下の建築主をつなぐ「エコ森木材住宅積み立て制度」の設定を提案しており、個人住宅需要喚起の方策の一つとして、注目される。
 木材は、建材、ボード、製紙など何段階にもわたってリサイクルでき、最終的にはエネルギー(サーマル)利用することも可能なバイオマス資源である。日本の持続的な木質バイオマス資源の利用推進には、国産材、特に建材利用をいかに拡大していくかが不可欠と考えられるのである。
*1 ウッドマイルズ研究会HP http://woodmiles.net/
*2 http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=5487



 資源の効率利用の観点から、住宅解体時の建築廃材や製材所・合板工場などから出される端材やオガクズなどの木質系バイオマスのエネルギー・マテリアル活用は、きわめて重要である。ただし日本では、その木質原料そのもの8割までが輸入品であり、その絶対量において世界貿易の約2割、丸太では4割を占め、米国、中国に次ぐ世界第三位の輸入大国である点が、環境問題の観点から問題となるのである。

 すなわち、木質系バイオマスの有効利用は必要だが、原料そのものが十分な環境・社会上の配慮にもとづいて入手されたものだろうか。適切な土地利用計画にもとづく育林と伐採の結果として得られたものだろうか。原料そのものの「氏素性」が問題となるのである。「氏素性」が怪しければ、たとえば盗品であったり、強盗・略奪の結果として得られたものであれば、いかに優れた原料であり、とことん灰になるまで使い切っても、どことなくむなしい感じがする。「知らぬが仏」的な間抜けな感触を禁じえない。

 これが「原産地」の持続可能性の問題である。木質系バイオマスの利用は、「原産地」である森林地域におけるマネジメント(管理)の問題を抜きにしては考えられない。農業系バイオマスにおける農地利用においてもしかりだ。バイオマスは、再生可能資源であり炭素中立(持続的に利用すれば大気中の二酸化炭素(CO2)を増やさない)であるという長所を持つ。ただし、その利用自体を自己目的とするのではなく、持続可能な循環社会を構築するための「手段」としてとらえるならば、バイオマス利用は、「原産地」である森林や農地の持続可能な利用を損なうことなく、むしろ推進するものでなければならない。

 1980年代後半から、とりわけ多様な動植物種と伝統的な地域社会や文化が息づいてきた熱帯林地域における商業伐採がもたらす環境・社会上の影響が世界的に問題となった。世界の熱帯木材貿易の丸太ベースで約半分(金額ベースで3割)を占めていた日本の熱帯木材貿易は、環境のみならず、先住民族を含めた地域社会に対する人権・生活侵害に加担しているとして問題視された。

 そこで90年代に入ると、東南アジアを中心とする南洋材からカナダ・米国・ロシアの温寒帯地域からの針葉樹合板への原料転換が進んだ。現在では、合板原料向けに輸入される丸太の4割が、極東ロシアからの北洋材で占められている。しかし「原産地」における持続可能性への視点を欠いた、単なる原料供給地の転換によって、熱帯材輸入の場合と同様の問題が生じている。

 原産地であるロシアでは、1991年のソ連邦の崩壊以降、98年までほぼ一貫して国民総生産が前年比マイナスとなった。経済再建の柱として石油・天然ガス・木材などの天然資源の開発依存が進んだが、予算不足のため、適切な管理計画の策定・実施のないまま、森林分野では略奪的な採取業が行われている。極東ロシアにおける不法伐採は2割〜4割に達するものとされる。そうしたなかでの日本のロシア材輸入の拡大は、持続可能性を欠く資源管理を助長する結果を招いている。
 日本では欧米に比べてFSC(森林管理協議会)などによる認証木材製品の輸入・流通の割合は、きわめて少ない。木材製品を含めた日本の木質系バイオマスの利用には、「原産地」における生態的・経済的・社会的な持続可能性を担保する認証制度の導入が望ましい。

 〈明治学院大学経済学部助教授 原後 雄太〉

日本の輸入木材に占める違法伐採の問題については、
フェアウッドキャンペーンHP http://www.fairwood.jp/ 等参照。



 旧ペレットクラブ準備会は、2004年3月5日に開催したシンポジウム「カミング・ペレット!」ならびに翌6日の総会にて組織の当初の目的が達成された事を確認し、発足以来約3年に及ぶ活動を3月末日で終えた。そして4月1日には新たにペレットクラブを設立し、木質ペレットの普及にむけた非営利活動を全国的に展開している。

 この一年を振り返って特筆すべきは、まずペレットクラブによる木質ペレット関連事業体の全国調査の実施とその結果であろう。2002年以降、木質ペレット燃料の製造施設が相次いで導入されるなか、事業の現状に関する統計の整備や分析は行われてこなかった。そこでペレットクラブでは、全国の燃料製造事業者とストーブ・バーナー・ボイラー等の機器製造輸入販売事業者あわせて41事業体に対して2000年から2003年までの過去4年間の実績に関するアンケート調査を行った。その結果、ストーブの販売は順調に増加しているものの、燃料の消費を牽引するまでには至っておらず、ボイラー等の導入による暖房や給湯、冷房需要による需要の拡大と平準化が不可欠である事がわかった※。2004年の事業統計については2005年の春に結果が出る予定であるが、概観するに、2004年はボイラーの輸入や国内開発が活発な一年であったといえそうだ。

 木質ペレットの普及において、緊急の課題は燃料の標準化である。2003年末時点で全国にペレット工場は13あるが、それぞれ独自の品質基準で燃料を製造していたのでは、燃焼機器との相性や品質保証の観点から消費者が迷惑するということで、岩手県や長野県、燃焼機器の検査機関、ペレットクラブによって燃料規格の検討が進められている。また、2005年度には林野庁も外郭団体を通じて燃料の自主規格制定に着手する予定である。

 このような状況の中、燃料製造事業者による横の連携も始まった。2004年10月8日、岩手にて「東日本木質ペレット安定供給協議会」が発足し、燃料の安定供給や製品の規格化、品質保証について、主に東日本の燃料製造業者が取り組みを開始している。

〈ペレットクラブ事務局長 小島 健一郎〉

※詳しくは「木質ペレット関連事業体の全国調査と結果分析、山林2004年11月号」参照

 

木質ペレット(提供:ペレットクラブ)
 

木質ペレット(提供:ペレットクラブ)



木質ペレット(提供:ペレットクラブ)
 
参考:ペレットクラブ http://www.pelletclub.jp