NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
2004年の動向
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2004年の動向
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(1)拡がるバイオマス・プラスチックの利用

 2004年も、トウモロコシを原料とするポリ乳酸のバイオマス・プラスチックの商品化や技術開発が一段と進み、店頭でも見かけるようになってきた。バイオマス・プラスチックは石油由来の従来のプラスチックに比べて生産にかかるエネルギー消費量がかなり少なく、温暖化防止の効果も期待されている。

 食品の容器包装に使うプラスチックの業界団体であるポリオレフィン等衛生協議会は、ポリ乳酸を一定の基準を満たせば安全性に問題のない樹脂として新たに登録。国内で食品の容器包装に使う樹脂は、同協議会の自主的な安全基準に適合することが実質的な条件であり、これによって弁当容器や生鮮食品の包装などへの採用に道が開かれた。

 富士通と東レは、パソコンのボディー材に使える植物系素材を共同開発した。ポリ乳酸などと石油系樹脂をほぼ1対1で混ぜたもので、通常のプラスチックを使う場合より、パソコン一台あたりの石油使用量を1リットル分減らせるとしている。
 ソニーと三菱樹脂は共同で、DVDプレーヤーの前面パネル向けに、難燃性や耐衝撃性を高めたポリ乳酸を開発。今年秋にソニーが発売するDVDプレーヤーに採用する予定。両社は、非接触ICカードも開発した。三菱樹脂は、松下電池工業の乾電池のパッケージやNTTドコモの料金請求用の窓付き封筒用にも製品を供給。東レは家庭用カーペット、三井化学やユニチカなどはポリ乳酸のゴミ袋を製品化している。
 鶏卵パック適正利用推進協議会は、鶏卵パックにバイオマス・プラスチックを利用するプロジェクトを実施。大手スーパーのイオン店頭で販売し、バイオマス・プラスチックの普及啓発を図っている。

(2)自動車業界での植物繊維利用
 トヨタ自動車系の自動車部品会社、アラコ(現トヨタ車体)社は、母材も強化繊維もケナフの「ケナフ強化ケナフ」を開発。ケナフ強化ポリプロピレン(PP)より剛性を3〜4倍まで引き上げられることを生かし、自動車外装部品に採用した。ケナフ繊維素材の増産も決め、インドネシア・スラバヤの工場に第二ラインを新設、2004年度の1500トンを2005年度には倍増させる。
 ブラジルでココナツ繊維やジュート、クロワなど繊維強化プラスチック(FRP)利用を実用化し、世界の先鞭をつけたダイムラー・クライスラー社は、フィリピンでも植物繊維を自動車部品に利用するプロジェクトを開始した。ココナツのモノカルチャー(単一栽培)が行われていたレイテ島で、マンゴー、ジャックフルーツ、ドリアンなど様々な作物を一緒に栽培するアグロフォレストリーに転換。ここでバナナの近縁のアバカを栽培し、農民が繊維を取り出し、その後自動車部品に加工する。同社はブラジルの他、ドイツ、南アフリカでも同様のプロジェクトを軌道に乗せている*1。

*1 ダイムラー・クライスラー社の植物繊維利用については、『アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ』、『バイオマス産業社会』(いずれも築地書館)等参照

トヨタ自動車ラウムに使用されるケナフ繊維を使った部品



 欧米では、再生可能資源(renewable raw material)として注目されている天然繊維。今やヨーロッパのほとんどメーカーが自動車内装材として利用している。天然繊維には、マニラ麻、サイザル麻、ケナフ、フラックス、ヘンプなどの繊維作物が使われている。
 現状では、天然繊維マットに熱硬化または熱可塑性樹脂を含浸させたものを熱プレスする方法や、押出工程で天然繊維を入れて板状の中間材料をつくり、それをプレスする方法がとられている。蒸気圧、超音波、酵素溶解などによって、天然繊維を射出成形しやすい材料に改良する技術開発が進められている。ガラス繊維強化プラスチックの市場を天然繊維強化プラスチックで代替していくことになるが、量産のための生産技術はまだ開発途上であるといえる。
 トロント大学Mohini M. Sain教授によると米国およびカナダでは、天然繊維の利用拡大のため、工業規格化が2005年度から始まる予定である。天然繊維が工業原料として流通するには、JIS規格のように一定の品質を標準化する必要がある。基本的に農作物であるため、その品質は気象条件などの自然に左右されるが、基準ができることよって製造メーカーの品質管理コストの軽減につながる。
 天然繊維の利用において、現状ではガラス繊維代替の要素が強いが、今後は、ポリ乳酸が生分解性プラスチックとして普及すると、耐熱性や耐久性を高めるための強化繊維としての需要が伸びていくと考えられている。

【天然繊維利用のメリット】

 @軽量化 ガラス繊維よりも天然繊維の方が軽いため
 A省エネ 製造時のエネルギーを80%減らす
 Bリサイクル性 ガラス繊維では難しいサーマルリサイクルが可能
 C低コスト ガラス繊維より低コストで調達可能
 D地域社会貢献 地域での原料調達は、現地の雇用促進、地域資源利用

【天然繊維利用の課題】
 @量産技術の開発
 A流通体制の確立と
   品質の標準化

【今後の天然繊維の
利用においてのステップ】
 @合成ポリマー+ガラス繊維
 A合成ポリマー+天然繊維
 Bバイオポリマー+天然繊維

〈Hemp Revo. Inc. CEO 赤星 栄志〉

ガラス繊維強化プラスチックから天然繊維強化プラスチックへのシフトがはじまっている
(提供:ジャパン・エコロジー・プロダクション)
   
プラスチック副原料としての研究開発が進んでいる
(提供:ジャパン・エコロジー・プロダクション)