(1)2004年大きく進展した、マテリアル利用とバイオ燃料利用
2004年度バイオマス利活用優良表彰(農林水産省主催)でソニー(株)と京都市が、それぞれバイオマスプラスチックの製品への活用、自動車燃料用バイオディーゼルの活用で受賞したことが示唆しているように、2004年のバイオマス利用ビジネスはマテリアル利用と燃料利用の分野で大きな進展があった。今後も、その傾向が続くことが考えられる。一方、バイオマスのエネルギー利用分野は、供給側の意気込みとうらはらに、コスト高や運用の難しさなどで、需要側の気運がさほど盛り上がっていないのが現状である。
(2)生活に密着したバイオマスの利用
バイオマスプラスチックの電子製品や自動車といった工業製品への利用だけではなく、麻_イヤフーズ製造のとうもろこし由来の鶏卵パックが関東地域のイオングループ店舗で販売されるなど、より生活に身近な食品関連商品にも利用先が広がっていることが注目される。バイオマスプラスチックは、2004年時点で世界全体の年産が2万トン程度であるが、今後15年間で需要量が現在の1500倍に達するとの推計もあり、わが国でも需要量の4分の1程度がバイオマスプラスチックに置き換わると考えられている。
しかし問題は、原料の調達先が現時点では海外(米国、豪州など)に限られていることで、わが国でもバイオマス用資源作物の生産体制の整備が必要となってくるが、その整備には、地域を巻き込んだ新たな発想が必要であろう。
(3)京都議定書目標達成のために
おりしも、2005年2月に京都議定書が発効することで、京都議定書における温室効果ガスの削減が国家的な目標として浮上してきた。従来では温室効果ガスの削減は工業分野での削減ばかり取り上げられてきたが、工業製品の購買を含めた生活部門の動向がそのカギを握るという見方が強まるとともに、吸収源としての森林資源の再生に大きなクローズアップがされるようになっている。バイオマスマテリアルや燃料を中心としたバイオマスの活用が、温室効果ガス削減の面でも吸収源の確保という面でも重要となってくるのである。
(4)雇用とバイオマス
バイオマスの利活用は、現代社会の最大問題でもある雇用の確保といった面でも極めて重要である。雇用といえばIT分野での話がよく取り上げられるが、それほど現実性があるものでもなく、雇用の縮小に面している建設業や運輸業などから比較的容易に参入できるバイオマスは、資源収集や運搬、前処理などに相当の人手がかかることから、コスト的には不利ではあるが、温室効果ガスの削減、雇用を生み出す。その雇用創出効果及び雇用維持効果はあわせて20万人程度との試算*1もあり、とりわけ北海道、東北、九州、北陸、中国地方では、大きな効果につながるとされている。
また関東圏や近畿圏の都市部においては、雇用効果としてはさほどのものは期待できないが、温室効果ガスの削減効果は大きいとされている。