「100万人のキャンドルナイト」*1というイベントがある。「スロー・イズ・ビューティフル」の著者である辻信一氏や音楽家の坂本龍一氏らの呼びかけで、2003年夏から始まった。夏至や冬至の夜、8時から10時まで「でんきを消してスローな夜を」と、ロウソクの光で子どもに絵本を読んだり、しずかに恋人と食事をしたり、省エネや平和や、世界のいろいろな場所で生きる人びとのことを思いながらすごすというものである。
2004年の6月には環境省もタイアップし、小池百合子環境大臣も東京タワーのライトアップを消すイベントに参加。全国239カ所でイベントが開催され、参加者650万人(主催者発表)というお化けイベントになった。
このキャンドルナイト、レストランやイベント会場、あるいは地域おこしのイベントとの相乗りでどんどん拡がっている。スローな時間をすごすためのキャンドルナイトなら、そのロウソクは化石燃料由来のものではなく、ミツバチの巣を原料とする蜜蝋ろうそく(特に国産の手づくりロウソク)、和ロウソク、植物油のランプなどバイオマス由来の灯りがふさわしいのではなかろうか。さらにそれをきっかけに、家族の誕生日や何かのイベントの際に、バイオマスの灯りをともす人々が増えるかもしれない。各地で菜の花プロジェクトやヒマワリプロジェクトが取り組まれており、その中で蜂蜜の利用を挙げているところもあるが、さらに蜜蝋を手近に使える「バイオマス」として捕らえてみてはどうだろうか。
また、家庭でできるバイオマス利用として、よく木質ペレットストーブが挙げられるが、薪ストーブや火鉢、七輪、暖炉、囲炉裏、五右衛門風呂、そしてヨーロッパなどでは今でも当たり前に使われている薪をくべる調理用キッチンストーブ*2なども、もっと見直されてもよいのではないか。従来の五右衛門風呂をそのまま使うのは現代生活の中でなかなか難しいと思われるので、例えばペレットストーブに給湯機能をつけるなど、もっと簡便にバイオマスでお湯が沸かせるようアレンジされた商品である。スローライフへの関心の高まりとともに、「炎のある生活」を求める人は増えている。換気や火事などの安全性には充分な注意を払う必要があるが、実は、こんなところにも、バイオマス・ビジネスの芽があるかもしれない。
〈バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき〉