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2018年の動向

2 国内の動向

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1. バイオマス利用の概要

エネルギー白書2019によると、日本で2017年度に利用されたバイオマスエネルギーは1,741万原油換算㎘で、2016年度と比較して9.0%の増加であり、一次エネルギー国内供給量5億2,062万㎘に占める割合は、3.3%であった【*20】

林野庁が行った平成29年木質バイオマスエネルギー利用動向調査【*21】によると、平成29年(2017年)にエネルギーとして利用された木質バイオマスの量は、木材チップが873万絶乾トン(前年比12.8%増)、木質ペレットが38万トン(前年比75.2%増)、薪が6万トン(前年比27.5%増)、木粉(おが粉)が41万トン(前年比25.8%増)で、木材チップのうち、間伐材・林地残材等に由来するものは263万絶乾トン(前年比37.4%増)だった。また、木質バイオマスを利用する発電機の数は264基(前年から24基増)、ボイラーの数は2,058基(前年から86基増)だった。また、輸入された燃料用チップは134,169 万絶乾トンだった【*22】

バイオマスの利用量は前年より順調に増加しているが、FITの一般木質バイオマス発電の稼働が相次いでおり、今後は輸入バイオマスが一層増加すると予想される。

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2. 政策等の動向(再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)については、トピックス参照)

2018年7月に閣議決定された「第五次エネルギー基本計画」に再生可能エネルギー主力電源化が打ち出されて以来、日本でも再生可能エネルギー拡大へ向けて、遅まきながら本格的に舵が切られ、各方面にその影響が及びつつある。

2019年4月に経済団体連合会は「日本を支える電力システムを再構築する」として、再生可能エネルギーの主力電源化と、FIT制度の抜本改正を求める提言を発表した【*23】

同6月、事業活動に使う電力を再エネ100%で賄うことを目標に掲げる国際的なイニシアティブ、RE100に参加する日本企業らが集まる「RE100メンバー会」は、「再生可能エネルギー100を目指す需要家からの提言」を発表した【*24】。「2030年に再エネ比率50%」の達成を目指し、政策を総動員することを求めている。

「都庁舎版RE100」を推進している東京都は、都庁第一庁舎で受電する電力を2019年8月から再エネ100%」に切り替えると発表した【*25】

経済産業省は、地中熱や太陽熱などの再生可能エネルギー熱の拡大に向け、要素技術を持つ企業を集めてシステム化し、上流から下流までのプレイヤーによるコンソーシアムを構築する【*26】

九州電力は、2018年10月、再生可能エネルギー電源の発電に対する出力制御を実施した。バイオマス発電については、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく市町村の認定を受けた地域資源バイオマス発電設備は出力抑制対象外となった一方、バイオマス専燃電源では、事前合意された最低出力まで抑制する対応を行ったようである【*27】

北海道の十勝管内では、1万3,939kWのメタン発酵発電施設の建設計画が、送電線の空きがないことで中断している。関係者は2018年10月に協議会を設け、計画継続の方策を検討することとしている。

改正建築物省エネ法が2019年5月、成立した。これによって、建築物の省エネが一層進展することが期待される。

また、森林経営管理法が2019年4月に施行され、森林経営管理制度がスタートした【*28】。同じく6月に、国有林野で最長50年伐採や販売ができる権利を民間業者に与える、改正国有林法が成立した【*29】

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3. その他バイオマス利用の事例など

2019年5月、国際規格策定に主導的な役割を果たし、国際規格にのっとったルールで固体バイオ燃料が生産、取引、消費されることを目的に、固体バイオ燃料規格化研究会が設立された。

アウラグリーンエナジーは2019年、インドネシア、スマトラ島のアチェ州でアブラヤシの残渣を利用したバイオマス発電事業に乗り出す。2国間クレジット制度に採択された【*30】。FIT制度におけるバイオマス発電では、輸入バイオマスの利用が増加しているが、輸送にかかるコストや環境負荷を考えれば、同社のように生産地の近隣で使う方が合理的だと考えられる。

含水率の高い廃棄物系バイオマスを利用するメタン発酵事業も多数、導入された。香川県綾川町の産業廃棄物処理事業者富士クリーンに、縦型乾式メタン発酵技術を採用した施設が導入され、2018年10月に運転を開始した【*31】。これまで、メタン発酵施設においては、排水処理が悩みの種だったが、この施設では、発酵残渣は既存の焼却施設で処理される。

食品廃棄物のメタン発酵ガス化発電施設への混合利用が有力との見方が強まってきている。バイオガス化発電設備をもつ下水処理施設は全国に101カ所あるが、そのうち8カ所で食品廃棄物をすでに受け入れている。国土交通省は「下水道エネルギー拠点化コンシェルジュ」を開始し、混合利用を支援する。農水省は2019年度に、既存施設への事業系食品廃棄物受け入れ可能性調査を行う【*32】

また、メタンガスは調整電源としても使いやすく、都市ガスの原料としたり、天然ガス車の燃料とすることも可能である。知多市南部浄化センターでは下水汚泥から発生させたメタンガスを都市ガスの原料として注入する事業を行っている 。

2019年7月19日、NPO法人バイオマス産業社会ネットワークなどバイオマス7団体が、「地域型バイオマスフォーラム」を開催し、7団体共同提言を発表した。230名余りが参加し、パネルディスカッションでは、バイオマス熱利用の現状と課題、知恵の共有、社会ニーズの市場化などについて活発な議論が行われた【*33】

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「地域型バイオマスフォーラム」パネルディスカッション

「地域型バイオマスフォーラム」パネルディスカッション

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7団体共同提言「地域型バイオマス推進に向けた基本的考え方」

< はじめに:バイオマスの特徴 >

バイオマスは下記の特質を有しており、地球温暖化防止のほか、持続可能な地域社会づくりのために、資源循環やエネルギー利用の一層の推進を図ることが必要である。

  • ・持続的に再生可能な資源であること
  • ・里地里山固有の生態系保全や国土保全に貢献すること
  • ・燃焼で排出される二酸化炭素は、光合成によりバイオマスに吸収されたものであること(カーボンニュートラル)
  • ・廃棄物系バイオマスからのエネルギー回収と共に環境対策や資源循環ができること
  • ・エネルギー利用に係る燃料購入費用が地域に還元されること
  • ・分散型で地産地消のエネルギーとして、エネルギー供給の強靭化(レジリエンス)を図り、また災害時の緊急対応等に活用できること
  • ・調整力のある電源として系統の効率的利用に寄与すること
  • ・低温から高温まで広範囲の熱需要に対応できること
  • ・一方、バイオマスは広く薄く存在し、その収集にコストを要する、化石資源と比較して一定の品質の原料を安定的に供給することが困難である等の課題もあること
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< 提言:基本的考え方 >

1. 持続可能な社会構築に向けた地域型バイオマスの利用促進

  • (1)多面的価値に関する評価手法の確立
  • (2)多面的価値を尊重した資金が流れる仕組の創設
  • (3)持続可能なエネルギー・ライフラインサービスモデルの創出
  • (4)ハード・ソフト両面におけるイノベーションの促進

2. バイオマス発電事業の定着

  • (1)自立化が図られるまでの間のFIT制度の継続
  • (2)熱電併給による高効率な分散型エネルギーシステムの推進
  • (3)農林漁業の健全な発展と調和のとれたエネルギーとしての支援の拡充
  • (4)廃棄物系バイオマスからのエネルギー回収ならびに残渣の資源循環の推進
  • (5)系統連系の強化

3. 熱利用の推進

  • (1)効率的な熱利用システムの導入促進
  • (2)バイオマスボイラ等熱利用機器の標準化
  • (3)顧客ニーズに応じたシステム構築やメンテナンス技術を有する人材の育成
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< 提案7団体 >

一般社団法人日本有機資源協会、バイオガス事業推進協議会、一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク、NPO法人農都会議、一般社団法人日本シュタットベルケネットワーク、一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会

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コラム⑦ 学校に薪ストーブを導入する 「火育」のススメ

九州薪・木質ペレット活用協議会(事務局:NPO法人九州バイオマスフォーラム)では、これまで学校に3台、公共施設や民間施設に3台の薪・ペレットストーブの設置を行っている。導入資金は、熊本県、林野庁、日本郵便年賀寄付金などの補助金を活用させていただいた。不足分は、会員企業の寄付で賄った。学校では導入にあわせて出前講座を実施した。そこで、目指しているのは、教育の場に火や木の燃料を取り戻すこと、すなわち「火育」である。

教室に手間のかかる木質燃料ストーブを導入することは、思ったよりも難しい。一つは、学校の先生が非常に忙しいことがある。導入に向けてアプローチした順番は、教育委員会→学校長→担任という順番となる。この中で一人でも強い反対があると、実現しない。

最初は、学校現場にデモ機を持ち込んで、説明を行った。ストーブの設置費用は、工事を含めると80万円~130万円が必要となった。その理由は、鉄筋コンクリートに穴をあけたり、3階建ての建物に煙突を設置したり、原状復帰ができることを条件に、難しい工事を行ったことにある。また、薪ストーブは寄贈ではなく10年間の無償貸借とした(10年経過後は、当団体の所有権を放棄)。例えば薪ストーブの設置条件として、以下のような項目を満たすようにお願いした。

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  • 1. 薪ストーブの導入により、災害時の拠点施設として暖房や煮炊き等にご活用いただけること。また、温室効果ガスの削減効果が大きく見込めること。
  • 2. 薪は自主的に購入もしくは調達していただくこと。
  • 3. モデル施設として、当団体が実施する災害に強い森づくり活動や地球温暖化防止の広報活動にご協力いただけること。また、薪ストーブの横に事業趣旨を説明したパネル展示にご協力いただけること。
  • 4. 薪ストーブの法定耐用年数(10年間)は、継続してご利用いただけること
  • 5. 継続利用のために、整備メンテナンス体制が取れること
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導入事例として阿蘇中央高校清峰校舎では、図書室に薪ストーブの導入を行っている。図書室を選んだ理由は、①司書の先生がつねに在室していること、②冬季の図書室が寒く、生徒の滞在時間が短いこと(当時は灯油価格が値上がりし、学校が灯油代を節約していた)、③一つの教室だけでなく、全校生徒が利用できること、などがあった。

また阿蘇中央高校にはグリーン環境課という林業を学ぶコースや、演習林を持っており、授業の一環として薪をつくることができた。薪ストーブを導入したことで、グリーン環境課の生徒たちが薪を作り、学校内で乾燥させて、図書室まで運ぶ体制が整えられた。学校での薪ストーブによるエネルギーの自給自足ができる事例となった。

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図書室に導入された薪ストーブ

図書室に導入された薪ストーブ

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オール電化により家庭内で火を使う機会が減る中で、マッチの擦り方さえ知らない子供たちが増えているという。教室内にあたたかな火を取り入れることで、石器時代のころから人類が付き合ってきた「自然と火と森」との関係を学ぶ機会を作るのが、我々の考える「火育」である。阿蘇中央高校では、ストーブの前で自習する生徒や、図書室の滞在時間が伸びたという。

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< NPO法人九州バイオマスフォーラム事務局長 中坊 真 >

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