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トピックス 木質バイオマス利用をめぐる現状と課題

3 FIT後のバイオマス利用

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1. 木質バイオマス発電の今後

FIT制度により、国産の木質バイオマス発電も各地に広がり、2017年には600万㎥もの間伐等の木質バイオマスが利用された。これによって、各地に雇用が生まれ、地域経済への恩恵も生まれている。だが、バイオマス材の買取価格は低く、山主へはほとんど利益が還元されていない。

一方ここ数年、世界的に急速に、木質バイオマス発電への視線は厳しくなっている。太陽光、風力発電はkWhあたり3円、6円まで発電コストが下がった。日本でも太陽光発電のトップランナーは8円/kWhまで下がっている。これに対し、燃料を継続的に購入する木質バイオマス発電では、化石燃料発電よりも安価に発電することが困難であることが明らかになってきた。

北海道立総合研究機構林産試験場の古俣寛隆らの研究によると、現在あるほとんどの、未利用木質あるいは一般木質バイオマス発電所は、20年間のFIT期間が終了すれば利益を上げることが難しくなる(下図)。その場合建設廃材などより安価な燃料に転換するか、そうでなければ設備が利用可能でも発電を停止すると考えられる。

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バイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量試算

図:バイオマス発電の経常利益率の推移【*14】

出典:シンポジウム「持続可能なバイオマスの要件とは ~経済循環とLCAの視点から考える~」古俣寛隆資料

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20年のFIT買取期間の間に、減価償却をすませ、利益を上げることができるとしても、雇用を含め、地域に構築された間伐材等の木質バイオマス流通システムをどう活かすか、事前に考えておく必要があろう。木質ボイラー向けチップ供給の拠点としたり、木質ペレット工場を建設するといったことも考えられよう。

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2. FIT制度の大幅見直し

2020年度にFIT制度の大幅見直しがなされることになっているが、経済産業省は急速にFITからの離脱を目指している【*15】。今後木質バイオマス発電は、熱電併給か、安定電源・調整電源としての役割を求められることになろう。特に、未利用木質バイオマス2000kW未満40円/kWhの区分は、そのままでは自立が困難なため、未利用の枠を外して地域のより安価なバイオマスも対象とし、熱利用をしながら、経済性を確保していくことが考えられよう。あるいは、金沢市で行われているように廃棄物発電への混焼であれば、FITなしでも経済性を確保できる可能性がある【*16】

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コラム④ 2018-2019年に稼働した主なバイオマス発電

2018年半ば~2019年半ばにかけて稼働した主な木質バイオマス発電所は、下表のとおりである。この表を見ると、新たに稼働した木質バイオマス発電所は、2000kW未満か1万kW以上の小規模と大規模に二分化しつつあるのが見て取れる。小規模のもの、特に木質ガス化発電は、建設、設置の期間が短くてすみ、今後、さらに導入が進む可能性がある。

ただ、2018年に森のエネルギー研究所が行った調査によると、小規模木質バイオマスガス化発電50カ所のうち、黒字化できている事業は一カ所もなかった。各プラントごとに独自の乾燥システムを導入し試行錯誤していること、燃料乾燥以外の熱利用をほとんど行っていないこと、ヨーロッパの木質燃料と日本の燃料との違いにより安定稼働が実現していないことなどが理由にあると考えられる【*1】

その一方、なかなか進まなかった熱利用だが、バイオマス発電の熱利用を考慮して建設を行う例も出てきた。2019年4月に稼働した岡山県笠岡市のサラでは1万kWの木質バイオマス発電所の燃料ガスや余熱を、11.2haのアジア最大級のハウスでのトマト、パプリカ、レタス栽培に利用する。

事故やトラブルも相次いだ。2019年2月、山形バイオマスエネルギーで整備の試運転を始めた直後、水素タンクのフタと見られる金属板が吹っ飛び、100メートルほど離れた民家にぶつかり、けが人が出た。岩手県の野田バイオパワーでは焼却灰の一部を原料にした地盤改良材を販売していたが、出荷前に土壌環境基準値を上回る重金属が検出されたにもかかわらず、県外に販売されていた【*2】

バイオマス発電は廃棄物を扱うこともあり、燃料輸送のトラックの出入り、排気ガスなど、近隣住民が不安を抱く事柄に対し十分なコミュニケーションを図りつつ、事業を進めていく必要があろう。

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表:2018年〜2019年に稼働した主な木質バイオマス発電

都道府県 市町村 事業主体 規模kW 規模【*】 稼働時期 FIT認定 備考
北海道 網走市 WIND-SMILE 1,995 1,995 2018.10 完成 一般木質 半分はPKS
宮城県 川崎町 県南エコテック 40 40 2018.11 稼働 未利用材 未利用材
秋田県 大仙市 大仙バイオマスエナジー 7,050   2019. 2 発電開始 未利用材 タケエイ、門脇木材
山形県 酒田市 サミット酒田パワー 50,000 46,500 2018. 8 商業運転開始 一般木質 4割国産木質チップ(未利用材、林地残材)、輸入木質ペレット等
山形県 新庄市 もがみバイオマス発電所 6,800 6,800 2018.12 本格稼働 未利用材 柿﨑工務所ほか 林地残材、製材端材
茨城県 神栖市 かみすパワー 112,000   稼働 一般木質 間伐材等の木くず、木質ペレット、石炭 関西電力、丸紅
茨城県 神栖市 JRE神栖バイオマス発電 24,400 24,400 2019.7 運転開始 建設廃材 建築リサイクル材、山林材 ジャパン・リニューアブル・エナジー
石川県 輪島市 輪島バイオマス発電所 1,994 1,994 2018.11 火入れ式 未利用材 トーヨー建設ほか 2.2万トン
山梨県 大月市 大月バイオマス発電 14,500 14,500 2018.8 商業運転開始 一般木質 16万トン。間伐材、剪定枝、樹皮等。15.4大林組に全株売却
愛知県 豊橋市 サーラeパワー 22,100 22,100 2019.7 稼働開始 一般木質 中部ガス PKS、林地残材、一般木材
岡山県 笠岡市 サラ 10,000 10,000 2019.4 操業開始 一般木質 輸入木質チップ、PKS。園芸施設に併設
徳島県 小松島市 GBバイオマス合同会社 250 250 2018 稼働 未利用材 ガスエンジン ゲンボク
愛媛県 内子町 内子バイオマス発電合同会社 1,115 1,115 2018.10 発電開始 未利用材 未利用材ペレット ブルクハルト社のコジェネ×6基 洸陽電機
福岡県 北九州市 響灘エネルギーパーク合同会社 112,000   2018.12 運転開始 一般木質 石炭混焼。オリックス
熊本県 南小国町 大仁産業 49 49 2018.6 稼働 未利用材 ガス化コジェネ 熱はキクイモの乾燥、マンゴー栽培に利用
熊本県 南関町 バンブーエナジー 1,000 1,000 稼働   竹 ORC
鹿児島県 鹿児島市 七ツ島バイオマスパワー合同会社 49,000 49,000 2019.1 売電開始 一般木質 PKS、木質ペレット、国内間伐材。IHI等

*  バイオマス分の発電規模
** 経産省資料、プレスリリース、報道記事等によりバイオマス産業社会ネットワーク作成

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