2009年、エネルギー供給構造高度化法が制定され、石油事業者、ガス事業者に、バイオ燃料、バイオガスの利用が義務付けられた。特にバイオ燃料については、下表のような目標が制定され、2010年11月に施行された。
表:バイオエタノール利用の目標量の総計(石油換算量)
2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 |
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21万㎘ | 21万㎘ | 26万㎘ | 32万㎘ | 38万㎘ | 44万㎘ | 50万㎘ |
出典:エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律関係条文集【*1】
21万㎘〜50万㎘という数値は、日本の輸送用燃料の0.2〜0.6%程度である。これは、EUの2020年に輸送用燃料の10%、米国の2017年に360億ガロン(2010年の米国のガソリン需要の25%程度)というバイオ燃料導入目標に比べ、非常に少ない。
また、エネルギー供給構造高度化法の関係条文の一つの「非化石エネルギー源の利用に関する石油精製業者の判断の基準」中に、おそらく日本の法律で初めて、一次資源の持続可能性基準が定められた。その主な内容は、ガソリンに比べて50%以上の温暖化ガス削減となること、食料との競合や生物多様性に配慮すること等である。この基準を満たすのは、ブラジルの既存農地で栽培されたサトウキビエタノールなど、一部に留まる。一方、2010年3月に公表された「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」報告書【*2】の中で記述されていた「生産者の労働環境や土地保有権利等の社会に与える影響」については、今回の基準では明記されなかった。
バイオ燃料についての研究が進むにつれ、大量のバイオ燃料利用が、食料との競合、森林や草地など生態系の破壊、土地利用をめぐる紛争の多発などの諸問題を引き起こしうるだけでなく、森林などからの土地利用転換や間接影響【*3】を考慮すれば、むしろ石油以上の温暖化ガス排出となる可能性が高いことが明らかになってきた。また、食料と競合しないセルロース系バイオマスの利用においても、液体バイオ燃料とするのは変換効率が悪く、バイオマス発電の燃料とし電気自動車の動力とした方が、液体に変換するよりも長距離を走行可能であることが判明してきている。また最近、バイオ燃料原料として「藻」が注目されているが、温暖化ガス収支、エネルギー収支、生態系への影響、品質の確保、コストなどの課題を克服するには、まだ多くの研究開発が必要であろう。
これらを勘案すれば、日本の導入目標量が過大とならなかったことは、適切であったと考えられる。