2. 国内の動向

(1)国内の概況

2007年の国内の温暖化ガス排出量は、CO2換算で13億7100万トンと前年度に比べ2.3%増加、1990年と比べて8.7%増加となった。

8年ぶりに日本で開催されたG8洞爺湖サミットなどにより地球温暖化対策の気運が高まったが、2008年12月の与党税制改正大綱では炭素税の創設が見送られた。一方、東京都に続いて神奈川県も、県独自の炭素税の導入検討を行なっている。

排出権取引については、自主行動計画に基づく自主的な温暖化ガス排出上限設定による自主参加の形ではあるが、2009年より開始する。

2008年後半、総合エネルギー調査会総合部会政策小委員会で、石油代替エネルギー利用促進法など現行制度に関する見直しが行なわれた。当初想定されたRPS法での都市ガス・石油への新エネルギー義務化は見送られ、代エネ法見直しに努力義務が規定される方向となっている【*1】が、特に石油への新エネルギー義務化は、液体バイオ燃料の導入を促すが、持続可能性についての配慮が不可欠であろう。

木質ペレットボイラー

木質ペレットボイラー

林野庁は2008年10月、排出枠を売買する試行制度を開始した【*2】。例えば山間部でボイラー燃料を重油から木質バイオマスに転換すれば、CO2削減ができた相当分を排出枠として取引することができる。関係者からは「燃料費の5%程度の価格ではインセンティブに欠ける」との声もあるが、バイオマス等促進の一助となることが期待される。

総務省は、平成20年度政策評価のテーマの一つに、バイオマス政策を決定、現在、評価のための調査等を進めている。バイオマス政策では、バイオマス・ニッポン実現に向けたバイオマスの利活用の推進に係る政策評価として、評価の観点を、1. バイオマスの利活用に関する政策の現状及び効果の発現状況等を調査・分析、2. バイオマスの利活用に関する政策について、関係行政機関の各種施策が総体としてどの程度効果を上げているかなどの総合的な観点から、全体として評価するもの。

特に行政主導によるバイオマス事業では、順調に稼動していない事例も多く、また、安全基準や品質規格の整備、法律や規制の調整など行政が取り組むべき事項が、必ずしも事業者のニーズに応えきれていない面も見られる。これまでの経験を生かして、より費用対効果の高いバイオマス施策が行なわれることが望まれる。

(2)日本企業の海外での展開

2008年、日本企業による海外でのバイオマス事業の展開が目立った。伊藤忠商事は、米国で木質廃材を燃料とするバイオマス発電事業に参入。丸紅も、米国での木質バイオマス発電会社を追加買収した。三菱商事は欧州で木質ペレットの生産・販売事業に参入する等といった記事が報道された。国内では大量の原料確保が困難であったり、排出権取引や再生可能電力買取制度の未整備などから採算が採りにくいバイオマス事業だが、事情の異なる海外ではビジネス・チャンスとなりうるといえよう。