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トピックス

2 2023-2024年のバイオマス発電の動向

1. FIT/FIP制度の変更

2022年度より、売電収入にプレミアムを上乗せした金額が売電事業者に支払われるフィード・イン・プレミアム(FIP)制度が開始されたが、2023年度調達価格等算定委員会の検討で、バイオマス発電においてもFIP制度の範囲が拡大された。具体的には、2025年度以降は廃棄物発電を除き、1,000kW以上ではFIPのみが認められる(図9)。バイオマス発電では、2024年2月時点でFIP制度が新規認定で1件1万kW、移行で27件32.2万kWが活用されている【*1】

また、2023年度よりメタン発酵バイオガス発電の買取価格が、35円/kWhに変更された。2024年度、2025年度では他の区分も含め、バイオマス発電の買取価格に変更はない。

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図9:FIT/FIP/入札の対象(バイオマス)のイメージ

図9:FIT/FIP/入札の対象(バイオマス)のイメージ

出所:令和6年度以降の調達価格等に関する意見

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2. バイオマス持続可能性ワーキンググループにおける検討等

バイオマス持続可能性ワーキンググループ(WG)は、2023年度に6回会合を開き、そこでの検討結果として、調達価格等算定委員会へ表2のような報告を行った。

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表2:バイオマス持続可能性ワーキンググループからの報告(一部を改変)

出所:令和6年度以降の調達価格等に関する意見

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表3:ライフサイクルGHG基準の適用対象となる発電事業者に求める情報公開

表3:ライフサイクルGHG基準の適用対象となる発電事業者に求める情報公開

出所:第92回調達価格等算定員会 参考資料1

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2023年12月に開催された第27回会合では、農作物の収穫に伴って生じるバイオマスと比べて明確な基準が策定されていない輸入木質バイオマスの持続可能性の基準や確認方法等について改めて検討が始まった【*9】

また、地域と共生した再生可能エネルギーの最大限の導入に向けて、2024 年4月1日に施行される改正再エネ特措法において、FIT/FIP 認定要件として、説明会等による周辺地域の住民に対する事業内容の事前周知を求めることとし、認定要件に従って事前周知がなされない場合には、FIT/FIP 認定を行わないこととなる。詳細は、説明会および事前周知措置実施ガイドライン【*10】で規定されている。

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3. 2023年のバイオマス発電の状況

2012年に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が開始して以来、バイオマス発電の稼働容量【*11】は急増した。2022年4月よりフィード・イン・プレミアム(FIP)制度も始まり、2023年末時点でFIT/FIP制度により、計656カ所、505万kWのバイオマス発電所が稼働し、同じく1,026カ所842万kWが認定されている。2022年末に比べ、90万kWが新たに稼働した。その8割以上は、輸入バイオマスを主な燃料とする一般木質バイオマスである。また稼働容量の74%、認定容量の79%は一般木材バイオマスの区分となっている(図10、表4)。

図10:再生可能エネルギー固定価格買取制度におけるバイオマス発電(新規)の稼働・認定状況

図10:再生可能エネルギー固定価格買取制度における
  バイオマス発電(新規)の稼働・認定状況

出所:資源エネルギー庁Website【*12】よりNPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

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表4:FIT/FIPにおけるバイオマス発電の稼働・認定状況

(新規 2023年末時点)

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出典:資源エネルギー庁Website【*12】

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一般木材バイオマス発電の稼働が相次ぐなか、アブラヤシ核殻(PKS)や木質ペレットの輸入量は一層増加した。PKSは2022年の510.3万トンから2023年の586.6万トンへ、木質ペレットは440.8万トンから581.3万トンへと3割以上増加し、PKSとほぼ同量となった。特に米国からの木質ペレットの輸入量が30.3万トンから126.3万トンへと1年で4倍以上増加した(図11)。PKSと木質ペレット輸入量の合計は、1,168万トンとなる。CIF平均はPKSが22.6円/kg、木質ペレットが30.2円/kgと高止まりしている。

図11:PKSおよび木質ペレット輸入量の推移

図11:PKSおよび木質ペレット輸入量の推移

出所:On-site Report No.596、No.597ほかより
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

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コラム① 2023-2024年に稼働した主な木質バイオマス発電

2023-2024年にかけて稼働した主な木質バイオマス等の発電事業は、下表のとおりである。新型コロナなどの影響で多くの案件の稼働が予定より遅れた。2017年にかけこみ認定された事業の稼働期限(期限を過ぎるとFIT20年の買取期間が逓減される)が迫っていることもあって、輸入バイオマスを使う大規模な発電所が相次いで稼働を始めた。兵庫県の相生バイオエナジーは、重油・原油を燃料としていた火力発電を改修した、バイオマス発電で国内最大規模の20万kWである。栃木県足利市のあしかがエコパワー発電所、兵庫県三木市の三木バイオマスファクトリーのように、廃棄物系木質バイオマスを利用する発電所も引き続き稼働を始めている。

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未利用材等国産の木質バイオマス燃料も価格が高騰している。長野県の信州F・パワープロジェクトは、燃料仕入れ価高騰の影響から中核となってきた征矢野建材が経営難に陥り、2023年8月に民事再生法の適用を申請した。信州F・パワープロジェクトは、綿半ホールディングスが事業を引き次ぐこととなった。また、北海道下川町の北海道バイオマス(997kW)が2024年3月、操業を停止した。発電用燃料木材を含めた操業にかかわる各種物価高騰により、事業継続が困難になったため、としている。2022年12月に稼働を停止していた兵庫県の朝来バイオマス発電は、大東建託グループが事業を譲受し、2024年4月より営業運転を開始した。

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表:2023-2024年に稼働した主な木質バイオマス発電

所在地 発電事業者名 規模(kW) 稼働時期 FIT
認定
備考
北海道
石狩市
石狩バイオエナジー合同会社 51,500 2023年
3月
一般木質 木質ペレット、PKS 奥村組、九電みらいエナジー、New Circle Energy
北海道
厚真町
株式会社sonraku 40 2023年
4月
未利用材  
北海道
網走市
合同会社網走バイオマス第3発電所 9,900 2023年
3月
未利用材 JAPEX、三菱ガス化学、SMFLみらいパートナーズ、東京エネシス、WIND-SMILE、日本製紙木材
秋田県
大館市
大館バイオ株式会社 1,990 2023年
12月
未利用材 市営釈迦内産業団地。秋田信組、秋田信金、羽後信金が23億円の建設資金を協調融資
秋田県
大館市
株式会社タクミ電機工業 40 2023年
1月
未利用材  
宮城県
仙台市
合同会社杜の都バイオマスエナジー 74,950 2023年
11月
一般木質 木質ペレット、PKS レノバ、ユナイテッド計画、住友林業
宮城県
石巻市
合同会社石巻ひばり野バイオマスエナジー 74,950 2023年
9月
一般木質 木質ペレット、PKS レノバ、プロミネットパワー、ユナイテッド計画、みずほリース
福島県
南会津町
グリーンヒート&パワー合同会社 49 2023年
6月
未利用材  
福島県
古殿町
合同会社カネショウサガワ 49 2023年
4月
未利用材  
福島県
古殿町
株式会社バイオカネショウ 49 2023年
4月
未利用材  
福島県
平田村
平田バイオエナジー合同会社 1,990 2023年
4月
未利用材 奥村組、四国電力、岩堀建設工業
茨城県
神栖市
神栖バイオマス発電所合同会社 50,000 2023年
10月
一般木質 PKS 中部電力、三菱UFJリースほか 
栃木県
足利市
あしかがエコパワー発電所 7,100 2024年
3月
廃棄物 未利用材、一般木材、剪定枝
千葉県
八街市
株式会社クローバーホーム 49 2023年
7月
未利用材  
山梨県
甲斐市
DSグリーン発電甲斐合同会社 6,950 2023年
11月
未利用材 廃熱は公共施設で利用 グリーンサーマル
岐阜県
美濃加茂市
合同会社美濃加茂バイオマス発電所 7,100 2023年
10月
未利用材 佐合木材、中部電力、三菱HCC
岐阜県
神戸町
ぎふ西濃グリーンパワー合同会社 7,500 2023年
4月
未利用材 ごうどバイオマス発電 丸紅、中部電力
岐阜県
土岐市
SGET土岐バイオマス合同会社 7,100 2023年
1月
未利用材 未利用木材、一般木材 タケエイ
愛知県
蒲郡市
愛知蒲郡バイオマス発電合同会社 50,000 2023年
8月
一般木質 タイ産木質ペレット10万t、PKS13万t 丸紅、中部電力、テラスエナジー
奈良県
五條市
合同会社木質バイオマス五條発電所 10,000 2024年
3月
一般木質 MJSソーラー他
兵庫県
相生市
相生バイオエナジー株式会社 200,000 2023年
3月
一般木質 木質ペレット 関西電力、三菱商事グリーンエナジー
兵庫県
姫路市
広畑バイオマス発電 74,900 2023年
12月
一般木質 大阪ガス、九電みらいエナジー 内外産チップ、PKS
兵庫県
三木市
三木バイオマスファクトリー 11,700 2023年
6月
廃棄物 木くず、廃プラ
岡山県
高梁市
合同会社高梁グリーンエナジー 1995.0 2024年
3月
未利用材 高梁グリーンパークに併設
広島県
竹原市
電源開発株式会社 600,000 2023年
5月
一般木質  
広島県
呉市
中国木材株式会社 9,990 2023年
2月
未利用材  
山口県
周南市
出光興産株式会社 50,000 2023年
2月
一般木質 木質ペレット16万t、PKS8万t 三井住友ファイナンス&リースが発電設備をリース
徳島県
阿南市
王子グリーンエナジー徳島株式会社 74,950 2023年
4月
一般木質 王子グリーンリソース、エネクス電力 東南アジアからの木質チップ、PKS
徳島県
徳島市
徳島津田バイオマス発電所合同会社 74,800 2023年
2月
一般木質 北米の木質ペレット、PKS 木材団地 レノバ、大阪ガス他
福岡県
苅田町
株式会社日本海水TTS苅田パワー 50,000 2023年
8月
一般木質 PKS、国内材。日本海水、TTS企画、タクマ
熊本県
錦町
合同会社熊本錦グリーンパワー 1,990 2023年
9月
未利用材 TESS錦町木上西バイオマス発電所 テス・エンジニアリング 
宮崎県
日向市
リージョナルパワー株式会社 14,500 2023年
6月
一般木質  
宮崎県
都城市
MTエナジー株式会社 5,750 2023年
3月
未利用材  

出所:経済産業省 事業計画認定情報Webサイト他より
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク作成

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4. 輸入バイオマスの問題

2024年3月、世界最大手の木質ペレット製造企業、米国のエンビバ社が、連邦破産法11条を申請し、民事再生手続きに入った【*13】。同社とは住友商事、三菱商事、丸紅などの日本企業が350万トン以上の長期契約を結んでおり、今後の日本の木質ペレット調達に影響が及ぶと考えられる。

2024年4月、米国のブッカー上院議員らは、「2024年森林バイオマス排出法」案を提出した【*14】。同法案は、森林バイオマスからのLCAGHGの評価方法の変更や大気汚染・騒音公害のデータ収集と報告などを米環境局(EPA)に求める内容である。

米国の木質ペレット工場には多数の大気浄化法等の違反があり【*15】、エンビバ社はこれまでに計約18万米ドルの罰金を科されている(表5)。カナダでも木質ペレット工場で繰り返し189回もの環境法違反が行われていたことが報告されている【*16】。日本は両国から2023年にそれぞれ126万t、158万tの木質ペレットを輸入しているが、持続可能性の最も基本である合法性担保への大きな懸念となる。

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表5:米国エンビバ社の大気浄化法等の違反

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出所:南部環境法律センター(米NGO)(2023年9月時点)
翻訳・編集:地球・人間環境フォーラム

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2023年11月、カナダから専門家2名が来日し、日本に輸出されている木質ペレット生産現場の状況について報告した【*17】。また2024年5月、菌根菌のネットワーク「マザー・ツリー」の提唱者として世界的に知られているカナダの森林生態学者、スザンヌ・シマード教授らが来日し、カナダのブリティッシュコロンビア州の原生林由来の木材などを原料とする木質ペレットが日本に輸出されている現状について訴えた(表紙写真目次写真【*18】 。また、コンサーベーション・ノース等は「残存する森林の伐採 ドラックス社のペレット工場はブリティッシュコロンビア州の最も希少な老齢林から丸太を調達している」レポートを公開した【*19】

気候変動対策として進められているバイオマス発電が、森林破壊を招いているとの懸念が世界的に広がっている。日本のFIT/FIP持続可能性基準では、SBP等の認証が用いられることとなったが(p8参照)、SBPの運用については、森林の炭素貯留量が減少している場合でも認めているといった問題点が指摘されている【*20】

2024年5月、宮城県石巻市の石巻港に係留中の貨物船のPKS倉庫内で、作業中の2人が酸欠で倒れ、そのうちの一人が亡くなった【*21】。PKSなどのバイオマス燃料は保管中に低酸素状態になることがある。日本各地でのペレットサイロにおける爆発・火災も相次いでおり、バイオマス燃料の安全な取り扱いのための迅速かつ適切な対応が求められる(コラム③参照)

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コラム② 2024年春、3大メガバンクが
木質バイオマス発電に関する方針を策定

2024年春、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三菱 UFJ フィナンシャルグループは、木質バイオマス発電に関するサステナビリティ方針を追加し、投融資に際して生産地における森林伐採リスク、ライフサイクル温室効果ガス(LCA-GHG)排出量の多さなどを考慮するという内容を加えた【*1】。特に、三井住友フィナンシャルグループの方針では、木質バイオマス発電事業の新設及び拡張案件に対しては「持続可能な燃焼材」(「未利用材・製材残渣含め原生林由来ではないこと、地域住民等の人権侵害を行っていないこと」と定義)が使用されることを確認の上、支援を行うとしている。

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2023年3月のNGO調査【*2】により、上記3行が大規模輸入バイオマス発電所(5万kW以上)の発電所への融資額上位であることが明らかになった。このことは、3行に対する2023年度のNGOによる株主提案資料でも言及された【*3】。また11月には、日本向け木質ペレットの輸入元第2位であるカナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州から森林専門家らが来日し、FITを所管する経済産業省に輸入バイオマス発電の支援中止を求めて書簡を提出した【*4】。木質ペレットの需要がBC州の原生林伐採につながっていることを訴え、メディアにも取り上げられた【*5】。その後、経済産業省のバイオマス持続可能性ワーキンググループでも、燃料が原生林に由来するリスクについて議論がされている【*6】。3行の方針発表は、これらNGOによる情報発信・働きかけなどを受けたものと見られる。

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一方、今回の3行の方針では、バイオマス燃焼による CO₂排出をLCA-GHGに含むか否かを明確にしていない。今後は、発電事業者に対して燃焼や森林の土壌からの排出の報告を求め、各行が既に設定している電力セクター中間削減目標の計算に含めること、既存の発電所でも原生林由来や森林減少・森林劣化を招く燃料を利用しないこと、そしてCO₂排出係数が石炭火力より多い木質バイオマス発電事業への投融資を、日本において2030年までにフェーズアウトする計画の策定が必要である。

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CDP「気候変動質問書」とバイオマス燃焼のCO₂排出~多くの事業者が適切な報告をせず

FIT制度ではバイオマス燃焼によるCO₂排出をゼロとしているが、GHGプロトコルやSBT(科学的根拠に基づく目標)、また、CDPの「気候変動質問書」では算定・報告を求めている。

例えば、「CDP気候変動質問書2023」の「生物起源炭素由来のCO₂排出は貴社に関連しますか?」という質問では、バイオマス燃料の燃焼が回答企業に関連する場合は「はい」と答えた上で、排出量をCO₂換算トン単位で回答することが求められている。ところが、日本の大手木質バイオマス発電事業者18社の回答状況を調査したところ、「はい」と答えたのは8社、そのうち排出量を回答したのは6社のみであった。半数以上の10社が「バイオマス燃焼由来のCO₂排出がない」と回答していることになる(表)【*7】。

表:各バイオマス発電事業者に対する質問と回答

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企業名 C6.7 生物起源炭素由来CO2排出の有無(○:はい、空欄:いいえ) C6.7a 生体炭素によるCO2排出量(○:報告している、空欄:報告していない) C8.2c 消費した燃料の量「持続可能なバイオマス」(○:報告している、空欄:報告していない) C8.2c 消費した燃料の量「その他のバイオマス」(○:報告している、空欄:報告していない)
大阪ガス  
住友林業  
豊田通商  
中部電力  
電源開発  
JERA  
住友商事      
丸紅    
九州電力    
三菱商事      
関西電力      
イーレックス      
伊藤忠商事      
石油資源開発        
JFEホールディングス        
東邦ガス        
東京ガス        
中国電力        
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CDPデータを利用する金融機関・投資家は、バイオマス燃焼によるCO₂排出について問題意識を持ち、事業者に対して適切な開示と排出削減効果のないバイオマス発電事業の見直しを求めていく必要がある。

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<地球・人間環境フォーラム 鈴嶋 克太>

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コラム③ 多発するバイオマス発電所の火災
−木質ペレットの特性理解不足に起因−

今年1月末に愛知県武豊市のJERA武豊発電所で発生した火災・爆発は記憶に新しい。ベルトコンベヤーに広がる炎の映像に衝撃を受けた人は少なくなかっただろう( 裏表紙写真参照)。木質バイオマス発電所での火災は、ここ数年で急増し、2018年以降少なくとも16件起きている(表)。千葉県袖ケ浦市の木質バイオマス発電所の燃料サイロでは2023年元旦に出火、鎮火は4ヶ月後だった。同9月には鳥取県米子市のバイオマス発電所でペレットを運ぶエレベーターで爆発が起きたが、武豊と米子では爆発事故の前に2度火災を起こしていた(表紙写真参照)。いずれもケガ人が出なかったのは不幸中の幸いだが、火災事故はあってはならないことであり、爆音や煙、臭いの被害にあった近隣住民からは怒りの声があがっていた。

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表:バイオマス発電所の火災リスト(2020年以降)

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火災年月 名称 燃料 廃棄物固形化燃料か
2020年2月 三重県のバイオマス発電所 PKS
2020年10月 ひびき灘石炭バイオマス発電所 木質ペレット・石炭
2021年3月 茨城県のバイオマス発電所 木質ペレット
2022年2月 CEPOバイオマス発電所 木質チップ 不明
2022年3月 石川県の火力発電所 木質ペレット・石炭
2022年8月 京浜バイオマス発電所 木質ペレット
2022年9月 JERA常陸那珂火力発電所 木質ペレット・石炭
2022年9月 JERA武豊火力発電所 木質ペレット・石炭
2023年1月 袖ケ浦バイオマス発電所 木質ペレット
2023年1月 下関バイオマス発電所 木質ペレット・石炭 不明
2023年3月 愛知県のバイオマス発電所 木質ペレット
2023年3月 関電舞鶴発電所 木質ペレット・石炭
2023年4月 山口県のバイオマス発電所 木質ペレット
2023年5月 米子バイオマス発電所 木質ペレット
2023年9月 米子バイオマス発電所 木質ペレット
2023年9月 徳島県のバイオマス発電所 PKS
2024年1月 JERA武豊火力発電所 木質ペレット・石炭

経産省WGの資料を元に筆者作成

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火災事故の多発により、経産省の電力安全小委員会電気設備自然災害等対策ワーキンググループ(以下WG)で23年末以降、バイオマス発電所の火災問題が議題に上がるようになった【*1】。WGの消防庁資料では、木質ペレットの粉塵等への着火が7件、木質ペレット貯蔵中に水分等により発熱・蓄熱し、自然発火した火災が3件とされ、24年2月には消防庁が「木質ペレットの性質に起因する危険要因について、適切にリスクアセスメントを行うとともに、その結果を踏まえた措置を講じること」を求める通知を都道府県に宛てて出した【*2】。WGの資料や事業者による火災事故原因と対策の資料等からは、「水分によって発熱または可燃性ガスの発生」や「摩擦や熱による粉塵からの火災」、「粉塵爆発」などを起こし得る木質バイオマスペレットの特性が、事業者に十分認識されていなかったことが読み取れる。

日本での火災・爆発事故の多発を受けて、カナダ木質ペレット協会が東京で開催した「バイオマス安全セミナー」では、木質ペレットのサイロ内での火災の際には、「水による消火は非常に危険で避けるべき」こと、「底面からの窒素注入設備を貯蔵庫に予め備える」ことなど、木質ペレットの特性を考慮した防火・防爆対策の必要性が強調されていた【*3】。カナダでは約20年前からペレット工場などでの火災事故が相次ぎ、業界全体でこの問題に取り組んできたというが、日本では、FIT制度開始後、急速に増えた大型の木質バイオマス発電所や、石炭バイオマス混焼発電所において、大量の木質ペレットがその危険性を十分認識されないまま使用されていたことになる。

不可解なのは、消防庁が火災予防条例における「木質ペレットが「廃棄物固形化燃料等」(再生資源燃料のうち水分によって発熱又は可燃性ガスの発生のおそれがあるもの)に該当する」か否かの判断を、事業者と自治体に任せていることだ。この判断により、適切な水分管理や温度管理、燃料集積高さの制限、発熱状況の監視などが必要かどうか変わってくるが、現在日本で使われている木質ペレットはほぼホワイトペレットであり、科学的に「水分によって発熱又は可燃性ガスの発生のおそれがあるもの」である。にもかかわらず判断を事業者と自治体に任せ、火災事故の半数は、「廃棄物固形化燃料ではない」とした施設で生じている。

木質ペレットの多くは、森林を伐採した原料からつくられているが、火災が起きるとサイロ内の燃料は無駄に燃えてしまうか、消火活動により使えなくなる。近隣住民の安全確保も含め、当然のことながら火災を起こすことは容認されないが、現状の管理方法では地域住民の不安は到底ぬぐえないものではないかと考えられる。

今後、消防庁や経産省がこの問題の深刻さをさらに深く受け止め、事業者による必要十分な対応を求めるとともに、火災予防条例や消防庁通知の確実な遵守と実行を確認すること、さらにはバイオマス発電がFIT制度の賦課金で支援するに足る「再エネ」と言えるのか、改めて検討されることが期待される。

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<地球・人間環境フォーラム 飯沼 佐代子>

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コラム④ 鉄鋼生産の脱炭素化において
バイオマスは有望な役割を果たすのか?

製鉄は世界の温室効果ガス排出量の7%を占めており、世界の一次製鉄のほとんどは原料に石炭を使っている。一部の鉄鋼メーカーは、既存の設備で使える石炭の代替となるバイオマス(主に木炭/バイオ炭)を模索しているが、これは世界の鉄鋼業の脱炭素化における重要な役割を果たすと言えるだろうか?

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鉄鋼はどのようにつくられるのか?

製鉄の歴史は数千年前にさかのぼる。初めは鉄鉱石を炭火で熱して鍛造していた。この方法が300年以上も前に変化した理由は、英国が森林をほとんど使い果たしたため、その代替として石炭を使うようになったからだ。1800年代半ばには、石炭を使った新しい製鉄プロセスによって、これまでにない規模と品質の鉄鋼生産が可能になり、産業革命が実現した。

今日、ほとんどの一次鉄鋼は石炭を使って生産されている。最初の工程である製鉄では、大量の石炭を高炉に投入して熱を供給し、鉄鉱石を還元する化学反応を維持する。この石炭の一部はコークスで、炉内の原料の重量を支えるのに必要な構造的強度を持つ。この溶けた「銑鉄」は、次に転炉(BOF)で鋼鉄にされる。1トンの鉄鋼を生産するごとに、約2.3トンのCO₂が大気中に放出される。

木炭を使った鉄鋼生産は、今も行われている。主に南米では、大規模なユーカリの植林地で栽培されている樹木が小規模な高炉で使用する木炭に加工されている。

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図:製鉄プロセスのイメージ

図:製鉄プロセスのイメージ

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バイオ炭はスケールアップできるか?

バイオ炭はコークスのように高炉内の原料の重量を支える強度がない。このため、大規模高炉では原料炭の20%を代替するのが限界である。もしバイオ炭の生産がゼロ・エミッションであったとしても、高炉からの20%の排出削減では不十分であり、パリ協定に合致していない。IEAの定義によれば、ニア・ゼロ・スティールとは、鉄鋼1トン当たりのCO₂排出量が0.4トン未満、つまり高炉からの排出量を80%以上削減することである【*1】。

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2つ目の問題は、原料の量的な規模と石炭に代わる原料を使うことができる可能性である。世界の鉄鋼業が年間で石炭の20%を代替するには約2億トンの木炭が必要であり【*2】、鉄鋼生産量は年々増加している。それに対して、2022年の世界の木質ペレット生産量は年間わずか4,600万トンだった【*3】。木材を木炭に変換するのは非効率的で、大量の樹木やその他の植物や植物由来の廃棄物質が必要になる。燃料源が近い製鉄所では、石炭をある程度代替できるかもしれないが、世界規模で見ればその量は取るに足らない。

マイティーアースをはじめとする環境保護団体は、製鉄のために森林をさらに伐採したり、天然林を植林地に転換したりすることを支持していないし、樹木や他の燃料作物が農地で栽培されることになれば、食料と燃料の土地利用をめぐる競争が激化する可能性がある。このような理由から、鉄鋼メーカーや環境保護団体を含むステークホルダーが協議してつくられた世界的な鉄鋼の持続可能基準である「レスポンシブル・スティール(ResponsibleSteel)」では、許容される森林由来の投入物を既存のFSC FM認証植林地からのものに限定した。このような保護措置がなければ、鉄鋼業界は世界の森林の劣化を促進しかねない。

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日本

日本の鉄鋼メーカーは、引き続き石炭ベースの高炉を使用する予定でいる。バイオマスの主な用途は、自家発電所で石炭と混焼することだが、コークス代替に木炭を使用している例は、日本ではまだ見当たらない。石炭は依然として中心的な存在であり、日本の銀行からの資金援助を受けて、日本製鉄は炭鉱会社の持ち株を増やしている【*4】。鉄鋼メーカーとNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術開発機構)は、バイオマスではなく、高炉の石炭を水素で代替する研究開発プログラム 「COURSE50」と 「Super COURSE50 」を提唱している。Super COURSE50は、総排出量の50%削減(水素代替と炭素回収の組み合わせ)を目標としているが、スティール・ウォッチはこれでは不十分であり、パリ協定の目標達成に向けた軌道から外れている【*5】。

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高炉を超える拡大可能な解決策

石炭を木炭で代替することによって、石炭を使用する高炉からの排出量を十分に削減することができない場合、よりよい選択肢は何か。現在、商業規模で展開されている、鉄を水素で直接還元し(H2-DRI)、石炭ベースの高炉を完全に置き換える、技術的にも証明されたプロセスがある。鉄が還元されると、製鋼用の電炉(EAF)に送られる(H2-DRI-EAF)。水素と電力がゼロ・エミッションの再生可能エネルギーで生産されれば、得られる鉄鋼もゼロ・エミッションに近いものになる。

この製鋼プロセスにおいて、化石炭素の残りの利用を代替するバイオ炭素源の量はわずかで、必要な炭素量は鋼鉄1トンあたり数キログラムに過ぎない。鉄鋼業を脱炭素化する鍵は、石炭ベースの製鉄への投資を止め、再生可能な水素ベースの鉄鋼生産を拡大することである。

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<マイティーアース日本統括プロジェクトマネージャー/
スティール・ウォッチアジア地域担当 ロジャー・スミス>

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