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バイオマスは「発電のみ」から産業用熱等へ

ここ1年、企業の脱炭素への取り組みが目に見えて加速化してきた。SBT(科学的根拠に基づく目標)やGHGプロトコルといった国際的な取り組みが進み、日本政府の対策も進んでいる。2050年脱炭素化において、化石燃料と類似した利用が可能なバイオマスは、非常に貴重である。しかし、持続可能な利用可能量には限りがあり、バイオマスは他の再エネでは代替が難しい中高温の産業用熱利用からの熱のカスケード利用やSAF(持続可能な航空燃料)などにシフトしていくことが望ましいと考えられる。

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日本ではこれまでFIT制度により、バイオマス発電が伸長してきた。しかし、熱電併給ではない発電のみの案件がほとんどであり、そうした発電所のエネルギー利用効率は低く、FITのような支援制度がないと事業性の確保が難しい。利用効率が低いため、生産・加工・輸送に関わる温室効果ガス(GHG)排出も相対的に多くなり、気候変動対策効果も限定的である。国内の未利用材を燃料とする2,000kW規模の発電のみの新規認定が行われているが、こうしたバイオマス発電所では年間3万トンのチップを必要とし、20年間で約86億円のFIT支援が行われる。その一方で、例えば栃木県那賀川町で導入された4,000kWのバイオマスボイラーでは、年間1.1万トンのチップを使用し、補助金は導入時の2.5億円のみで事業として成立している。こうしたことから、今後のFIT/FIP制度では熱電併給のみを新規認定すべきだと考えられる(コラム⑤)

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気候変動対策への取り組みが進み、石炭火力廃止への圧力も高まっている。日本ではアンモニアや水素に加え、バイオマス混焼も進んでいるが、そもそも部分的であれ石炭火力を存続させるなら、脱炭素化にはならない。石炭混焼のためのバイオマスが、海外の貴重な天然林を伐採したものであれば、なおさら気候変動対策に逆行する。また、2024年1月に爆発・火災事故を起こした武豊火力発電を視察したが、107万kWの石炭火力発電所から100m以内に住宅が立ち並んでいた。改めて、環境及び社会的な負荷のより少ないエネルギー利用が求められる。

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FIT制度のGHG基準の詳細が固まったが、ほとんどのFIT認定されたバイオマス発電はGHG基準以下に収める義務は負わず、情報公開も努力義務である。発電事業者の新たな負担とはなるが、早急な改善が求められる。また、木質バイオマス燃料の持続可能性の確保も喫緊の課題である。森林認証には様々な種類があり、なかには原生林由来の丸太であっても認証取得が可能なものもある。こうした森林認証による持続可能性確保の限界は国際的に認知されてきており、2024年12月から施行されるEUDRでは認証があっても生産地の地理情報が求められている(国際的な動向)。

さらにEUのREDⅢで激論が交わされたが、森林由来のバイオマスは、用材を収穫する際に出る低質材と、実際にはバイオマス目的で伐採された木材を区別することは難しい。一つの解決策は、森林由来のバイオマスは熱電併給を含む熱利用へシフトさせていくことだと考えられよう。

その一方で、カーボンゼロの社会ではマイナスカーボンも必要となる。バイオ炭などの形で土壌やコンクリート等への蓄積も今後進められよう。

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2024年春、3大メガバンクが木質バイオマス発電に関するサステナビリティ方針を追加した(コラム②)。遅まきながら、バイオマスの持続可能な利用への科学的知見が広まりつつあると感じる。

2024年も、こうした活動を、志を同じくする方々とともに推進していく所存である。

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<NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき>

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