新エネルギーとしてのバイオマス 京都議定書に定められたわが国の責任(温室効果ガス排出量の削減)を達成するために、政府の地球温暖化対策推進大綱(2002年3月決定)では、2010年度の新エネルギー導入目標を以下のように定めている。このなかで、広い意味でのバイオマス利用は、全体目標の6割を占めている。 上図は、日本エネルギー学会が発表したわが国の主要バイオマスエネルギーの利用可能量(単位PJ/年、PJは10の15乗)である。合計は1327PJ/年であり、わが国の一次エネルギー総供給量の6%弱に相当する(2000年)。現実の利用には経済性、資源調達など様々な障壁があるものの、これらの膨大な資源を適正に利用するための一層の努力が必要になってこよう。
「エネルギー政策と新エネルギー」 <炭素制約経済社会の到来> 2008年から12年までに先進国全体で90年レベルに対して温室効果ガスを平均5.2%の削減をしようという目標を掲げた「京都議定書」の採択から、丸5年が経過した。2001年春、先進国全体の総排出量の三分の一以上を占める米国の突然の離脱はあったものの、後世に適切な環境を残そうという原理原則に基づいた考えが埋没するはずがなく、近い将来「京都議定書」が発効することは間違いないだろう。いよいよ環境を組み込んだ市場経済、すなわち「炭素制約経済社会」が幕開けすることになる。 <わが国初のエネルギー基本計画の策定と新エネルギー> わが国でも、これを受けて2002年6月、議員立法でエネルギー政策基本法が成立した。エネルギー基本法の重要なポイントは、安定供給と環境保全という大原則のもとでエネルギー市場の自由化を達成することを明確にしたことで、極めて高く評価できるものである。これに引き続き、2003年、エネルギー政策のバイブルとも言えるエネルギー基本計画*が策定されたのである。大きな枠組みはこれまでのエネルギー政策を継承しているものの、2010年以降の長期的展望の取組みとして分散型エネルギーシステムと燃料電池の普及を念頭に置いた水素社会の実現を、わが国のエネルギー政策の中に明確に位置付けたことが特筆される点である。新エネルギーの推進は勿論のこと、分散型エネルギーシステムの推進が明確に位置付けられたことにより、バイオマス発電、太陽光発電や風力など新エネルギーの量的拡大に向けた時代が到来したといえる。RPS法の施行は、この重要な第一ステップとして捉えられるべきであろう。 *エネルギー基本計画 http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004573 |
|
柏木孝夫:1946年生、東京都出身。東京工業大学大学院で工学博士を取得後、米国商務省招聘研究員等を経て現在東京農工大学大学院教授。経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長を務める等わが国のエネルギー政策に深く関与している。 |