「バイオマス資源利用飛躍の年」へ向けて

 バイオマス・ニッポン総合戦略が策定された2002年が「日本のバイオマス元年」だったとすると、2003年は、「始動の年」だったと呼べるかもしれない。ただし、平坦なスタートであったとは言いがたく、このダイジェスト版でも繰り返し述べられているように、各地で始まったバイオマス利用の試みは、関係する方々の尽力により、力強い歩みを進める一方で、これまでバイオマス利用を阻んできた理由、特に制度的な壁にぶちあったケースが数多く見られる。

 2003年の動きで気になることの一つが、エネルギー利用のバイオマス利用において、助成金を受けるケースがほとんどということである。イニシャルコストの高さもさることながら、助成金なしでは市場経済の中で立ち上がることができないという現実には、危惧の念を抱く。助成制度等の整備も進める一方で、どうすれば市場経済の中で広がっていけるかを今一度、検証し直し、制度設計を見直す必要があるのではないだろうか。さまざまな法律の整理や規制緩和、また、化石資源の外部経済となっている負の部分を内部経済化することなどである。具体的には、化石燃料に炭素税やNOx、SOx税などをかけ、その税収を自然エネルギー電力の買取価格上乗せ分に振り向けるといったことなどである。

 また一方で、国内のバイオマス需要にともなって、無制限に輸入が拡大しないように対策を打つことも必要であろう。せっかく多くの人の努力でバイオマス資源の需要が生じても、海外から安い輸入品が怒涛のように入ってきては、エネルギー安全保障や地域資源の活用という、バイオマス資源利用の大きな利点が損なわれる。木材輸入の現状を見ても、インドネシアやロシアなど管理が十分に行われていない地域から日本への、不法伐採を含む木材の大量輸入が問題視されていることを考えれば、こうした懸念は杞憂ではなかろう。
 輸入をすべて禁止するのは現実的ではないが、国内のバイオマス資源利用を育成する観点から、国内資源を優先する必要があるのではないだろうか。

 海外のバイオマス資源を利用するにあたっても、可能な限り生態系や地域社会への影響を配慮した上での調達を行う方法を、模索すべきであろう。発展途上国で広大な土地を囲い込んで農民を追い出し、ユーカリやオイルパームなどの単一樹種を植林し、それらが大量に日本に輸入される事態、さらには、熱帯や温帯の貴重な原生林を切り倒して、チップやペレットの形で大量に輸入され、(末端の利用者がそうと知らされずに)利用される事態は、避けなければならない。

 そうした点に注意を払いつつ、2004年が生態的・社会的にも適正なバイオマス資源利用の「飛躍の年」となるよう、バイオマス産業社会ネットワークも活動をさらに活発化させていきたいと考えている。

<バイオマス産業社会ネットワーク 泊みゆき>

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