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2014年の動向

2 国内の動向

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1. バイオマス利用の概要

エネルギー白書2015によると、2013年度に利用されたバイオマスエネルギーは原油換算1,216万㎘で、一次エネルギー国内供給量に占める割合は、2.2%だった【*38】。電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)にもとづく2014年度のバイオマス発電による電気供給量は、約16億kWhだった【*39】。

また、木材需給表によれば、2013年の薪炭材の需要量は121.1万m3で、国内生産が23.7万㎥、輸入が97.4万㎥となっている【*40】。2013年の木質ペレット国内生産量は11.0万t、輸入量は8.4万tだった【*41】。

世界的に、バイオマスは再生可能エネルギーのなかで最も多く利用されているが、日本においても、同様である(上図)。また、2011年度の日本のバイオマス・廃棄物のエネルギー利用の概要は、下図の通りである。製紙業で半分以上が使われ、次に清掃工場が2割弱となっている。今後は、FITによる発電が増加するものと考えられる。バイオマス利用の半分以上は、熱利用である。無理に発電や液体化するよりも、熱利用やコジェネレーションのように、費用対効果に優れ効率の高い利用方法を促進すべきであろう【*42】。

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図:日本の再生可能エネルギー種類別比率

図:日本の再生可能エネルギー種類別比率

出所:IEA Energy Balances of OECD Countries 2014

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図:バイオマス利用実績の推計

図:2013年度におけるバイオマス利用実績の推計

出所:平成25年度新エネルギー等導入促進基礎調査
(バイオマス・廃棄物による発電利用および熱利用の導入実績調査【*43】)
をもとに作成

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富士経済によると、2014年のバイオマス発電プラント市場は、600億円弱程度の見込みである。バイオマスプラスチックの2014年度市場規模の見込みは、1,789億円に上り、普及期に入ったとされる【*44】。

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図:バイオマス発電プラント市場

図:バイオマス発電プラント市場

出所:富士経済マーケット情報

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2. 種類ごとの概要

メタン発酵もFIT制度ではずみがつき、自治体の下水処理場等において、ゼネコンや専門企業がバイオガス事業を実施したり、北海道、特に十勝地方のように施工業者の台頭などにより、「面」として普及が進む地域も出てきた。また、福岡県大木町では、生ごみのメタン発酵後に出た液肥を農地に使い、栽培された野菜を調理して出すレストランに人気が集まり、地域活性化策となっている【*45】(目次写真)。その一方で、まだ不慣れな事業者も多く、今しばらくは、試行錯誤が続くと考えられる。

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バイオエタノールについては、エネルギー供給構造高度化法にもとづく利用目標があり、2013年度の導入実績は255,320原油換算㎘(98%はブラジルからの輸入)である【*46】。経済産業省は、バイオ燃料持続可能性基準の制度運用等に関する研究会を毎年開催し、各国の情勢や持続可能性基準の順守状況について議論を行っている【*47】。

また、全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会によると、2013年度におけるバイオディーゼル製造量は9,723㎘で、製造コスト(推定概算価格)は101.1円/ℓ、ゴミ収集車、トラック、バス、建設現場などで多く利用されている【*48】。年間製造量は、2011年度の8,593㎘、2012年度の8,383㎘と比べて、増加している。

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コラム4 北海道で産業用大麻の試験栽培スタート

産業用大麻(ヘンプ)とは、マリファナ効果が全くない品種の大麻草であり、海外では、住宅用の断熱材や自動車内装材、種子を用いた健康食品や化粧品、敷料などの原料として栽培されている。戦後、大麻取締法の制定を機に北海道内の大麻栽培は途絶えたが、2006年から北見市の農業法人が試作栽培を続けており、再び道内の栽培復活に期待する農家や企業は多い。このような背景のもと、2013年3月の北海道議会における産業用大麻についての質疑を受けて、同年8月には北海道農政部が北海道産業用大麻可能性検討会を設置し、その可能性の実証にむけた提言を内容とする報告書を2014年3月末に取りまとめた【*】。

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そして同年3月末、産業用大麻を利用した地域おこしに非常に関心が高い東川町からの研究委託を受けた地元の有機農家と元農業試験場研究者に、大麻研究者免許が北海道知事から交付され、0.22haの作付面積が許可された。1年目の2014年度は、9月下旬がピークで約4mに生育し、5月8日播種・密植区の乾物重はヘクタール換算で26〜30tであり、ビート、デントコーン以上の乾物生産能力を示した(写真参照)。しかし、生育の旺盛さと引き換えに開花時期がやや遅れ、北海道の気候ゆえ、登熟期間の積算温度不足や降霜、降雪の影響で種子がほとんど採取できなかったという課題が残った。

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4mに生育した産業用大麻

4mに生育した産業用大麻

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生産物は、地元の炭製造工場と栃木県の花火会社の協力を得て、麻茎をチップ化し、炭化させた麻炭を花火の割薬に使うことを試みた。2015年6月末には、この麻炭を用いた花火を15発打ち上げて、見事に成功した。麻炭は、燃焼スピードが速く、そのスピードをコントロールしやすいこと、微粉末にしやすいこと、原料入手が容易であったことから江戸時代から花火の割薬原料として使われていた。ところが、現状は麻炭の国内生産量が少なく、中国産に頼らざるを得ない状況にある。この花火需要を国産に切り替えるだけで、作付面積にして40〜50haが見込める。

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2015年度からは栽培許可面積を0.54haに増やし、引き続き採種試験、栽培試験、加工試験、商品試作および試作販売を実施する。事業初期の計画では、種子を漢方薬の麻子仁(マシニン)の原料、茎を花火用麻炭として供給できることを目指す。そのために、EUのヘンプ先進地であるフランスに2015年9月に視察ツアーを実施し、数年後の事業化に向けたプランを練っていく予定である。法制度・生産・加工・販売と課題は山積であるが、北海道の新産業を担う農作物としての可能性を追求する挑戦が始まった。

<NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事 赤星 栄志>

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