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2012年の動向

3. マテリアル利用の動向

2012年は、世界的な石油価格の上昇リスクの備えという視点からバイオマスのマテリアル利用の研究や実用化が、大きく進展した年であった。

トウモロコシ由来のポリ乳酸(PLA)は、米国のネイチャーワーク(NatureWerks)社が14万トン/年の生産プラントによって様々な用途に使われている。国内では、帝人が1,000トン規模のプラントを立ち上げ、結晶構造を変えることで石油系ポリエステル(PBT,PBT)に匹敵する210℃以上の融点を有した「バイオフロント」を商品化し、マツダの水素エンジン車のシート、メガネフレーム素材等に採用されている。

また、国内のバイオマス原料である木材、竹、米、貝殻などからもプラスチックをつくる試みも行われている(写真参照)。

古々米と麻のバイオマス・プラスチックで製造された内装ブロック

古々米と麻のバイオマス・プラスチックで製造された内装ブロック

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バイオ・ポリエチレン(PE)は、サトウキビを搾った時に発生したかす(廃糖蜜)から製造されている。ブラジルのブラスケン社によって生産能力20万トン/年と量産化が2010年からはじまっている。日本にも輸入され、レジ袋やポリ袋が製品化されている。日本バイオマス製品推進協議会によると、2012年の国内市場でバイオPEが5万トン、ポリ乳酸6,000トンとバイオPEの利用が増加している。

バイオPET(ポリエチレンテフタレート)は、サトウキビの廃糖蜜を発酵・精製してエタノール、エチレンを経てつくられている。コカ・コーラ社のお茶やミネラルウォーターの容器に約30%の植物由来樹脂を使ったものとして商品化している。東洋紡は、従来の石油系と同等の品質のもので植物度30%のバイオPET熱収縮フィルムを商品化している。

石油系のナイロンとポリエステルに次ぐ第3の繊維として期待されているのが、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)である。大手のデュポンでは、遺伝子組み換え微生物でプロパンジオールを発酵生成したあと、石油由来のテレフタル酸と鎖状に重合させて製造している。PTTは、トヨタのプリウスαのエアコンの吹き込み口に採用されている。

バイオポリアミドは、フランスのアルケマ社によってトウゴマから採れるひまし油から開発されている。そのポリアミドは、300℃を超える高融点(耐熱性)のある素材が開発され、デンソーのラジエータタンク等に採用されている。バイオコハク酸は、オランダDSM社と仏ロケット社による合弁会社「リベルディア社」によって1万トン規模の商用生産が2012年末に始まっている。ポリブチレンサクシネート(PBS)などのいくつかの用途の代替を想定している。

研究開発においては、食糧と競合しない木質系のセルロース由来のものに注目されている。例えば、木質成分であるヘミセルロースから中間原料のフルフラール(FRL)を製造する技術を王子製紙が担当し、様々な化学品の原料となるテトラヒドロフラン(THF)の製造プロセスを三菱化学が担当するプロジェクトも進められている。また、ナノセルロースは植物の細胞壁の骨格成分で、植物繊維をナノレベルまでほぐしたセルロースナノファイバー(CNF)や針状結晶のセルロースナノクリスタルが有望視されている。経産省は、ナノセルロースの事業化に向けた産学官の連携体制構築に2013年度から着手する。

バイオマス系のプラスチックの種類や量が増えていくに従い、植物由来がどの程度のものかが一般消費者にわかりにくい状況を生みつつある。日本バイオプラスチック協会(JBPA)のバイオマスプラスチックの識別表示制度においては、重量で25%以上のものとなっている。最終製品として植物度がどの程度なのか、カーボンオフセット制度と合わせて、わかりやすい表記を検討していくことが今後の課題であろう。

<赤星 栄志(Hemp-revo,Inc.【46】 代表)>

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コラム5 フクシマオーガニックコットンプロジェクト

「フクシマオーガニックコットンプロジェクト」は、㈱アバンティ、NPO法人ザ・ピープル【*】などにより、311の被害からの福島の農業の復興・再生に向けて、2012年春より始まった。

2012年5月に地元農家やNPOがいわき市内15カ所、1.5haに種をまき、また多くのボランティアが首都圏から訪れ、栽培の支援を行っている。地域内外の力を結集し、今まで以上に地元の農業の魅力を再発見し、地域の魅力を発信することが地域活性化につながると考えから、被災農地となっている土地を利活用し、風評被害に負けない持続可能なオーガニック商品作物の栽培に取り組んでいる。有機農法での綿花栽培からスタートし、紡績から製品製造・販売・購入・使用・リサイクルの循環システムを構築し、自然環境に優しい「衣」のサイクルの完結系スタイルを提示し、子供達への環境教育ツールとしても活用していこうというものである。

オーガニックコットン栽培風景

オーガニックコットン栽培風景(写真提供:NPO法人ザ・ピープル)

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また、首都圏からの援農体験バスツアーを開催し、実際に被災地での農作業体験を通して、いわき農業に対する理解者や支援者を育成するとともに交流人口の再創出を図っていくことも計画している。

およそ100年前まで、日本各地で綿の栽培がされており、現在長野、千葉、山梨などでオーガニックコットンは栽培されているが、日本の繊維の自給率はほぼ0%である。通常の綿花栽培では、大量の化学肥料と農薬が使われているが、オーガニックコットンプロジェクトでは、農薬の類を一切使わず、手間をかけて栽培を行っている。

すでに第1弾の商品「コットンベイブ」(コットンボールを使ったマスコット。下写真)がつくられた。2013年度以降、広野町や南相馬市などへ栽培を拡大し、また2013年6月には、2012年に栽培された綿(米国産オーガニックコットンとのミックス)でTシャツを製造・販売する予定である。

フクシマオーガニックコットンベイブ

フクシマオーガニックコットンベイブ(写真提供:NPO法人ザ・ピープル)

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