バイオマス利用で常に問題になるのが、収集・運搬である。特に、未利用バイオマス(林地残材や間伐材など)の利用においては、収集・運搬コストをいかに抑えるかが困難を極め、これらのバイオマス利用を阻害する最大の要因となっている。収集運搬についてはしばしば、欧州にならって高性能機械の導入などが特効薬と喧伝する向きもあるが、わが国の場合森林施業のスケールが小さすぎるため、林業のシステムの大変革がその前に必要であり、さほど現実的な話だとは言えないだろう(もちろんそれが達成されることはわれわれの悲願だが)。そこで当面、未利用バイオマスの利用を進めるためにいくつかの工夫が必要であり、特に林業がさほど行われていない急傾斜地が多い山村地域では、必要不可欠なものとなってくる。
山梨県早川町、山梨大学などが取り組んでいるのが、(1)ワーキングホリディプログラム:地元施設に1泊2日宿泊しながら、都市住民等が週末に山仕事の体験を行いつつ、週末の余暇を過ごす。その活動の結果として、資源調達を図る。林地残材を枝払いし、玉切り、収集輸送などが含まれる。(2)林業者インターン制度による調達:都市住民等がアルバイトやボランティアでなく、将来的には林業を目指して林業体験を行いながら、資源調達を行う。こうした活動を通じて、年間100立方メートルの従来搬出できなかった間伐材を利用可能にする計画である。
大阪府箕面市の藤沢市長はバイオマスの利活用を進めるにあたって、「住民力賦存量」というコンセプトを提唱している。これからは、バイオマスは資源やプラントや予算だけでなく、都市地域住民の力を活用したプロジェクトが求められることになろう。
図:山梨県早川町で計画されている森林管理・資源利用の取り組み
バイオマス利活用は農山村部の専売特許ではなく、むしろ都市部にこそ食品残渣を中心に大きなバイオマス資源の蓄積があり、今後ポスト京都議定書対策として大きな二酸化炭素排出量削減を求められる場合、バイオマス利活用を進める必要に迫られる可能性が高い。しかし、都市部のバイオマス利用はまだまだ未知の要素が大きく、地域住民の理解を得る困難さも並大抵のものではない。また現状では、廃棄物関係は環境省、エネルギー関係は資源エネルギー庁、下水道は国土交通省、さらに都道府県や市町村が複雑に絡まり、総合的な利用計画を立てるのが困難であった。また専門知識が必要な分野が多く、一般の市民が簡単に状況を把握して合意形成を行うことがかなり難しい分野でもあった。
こうした状況を解決するツールとして製作され現在拡大開発中なのが、PEGASUS研究会によるPEGASUS(Public Energy/Environment Giga-Analyzer for Sustainable Society)システムである。
PEGASUSシステムは、1.誰もが使える循環型地域システム創造支援のツールであり、現状と計画の比較が画面上で容易に行うことができ、地域の合意形成に利用できる(廃棄物・未利用資源、自然エネルギー等利用計画;エネルギー節約、異業種間連携、地域内自給、CO2排出量変化等) 2.地域の環境保全型工業・農業システムの計画に利用可能 3.全国を対象にしたデータベースを実装(細かいGISではなく、原則として市町村単位;必要に応じて町丁目レベルまでの解像度を保障) 4.webを通して全国の多様なユーザーに公開 5.すべての数値の出典と履歴参照機能をもつ 6.データは専門家によるチェックと認証ずみ 7.データ更新・追加システムを持つ 8.物質・エネルギー利用のシナリオはユーザー自身によって作成できるが、管理者からの提案シナリオという「一括変換」モードで比較検討が行える 9.地域の各種の既存施設を省庁の壁を越えてGIS閲覧し検討できる 10.物質の処理フローをインターネット上で図示でき改変できる などの特徴を持っている。
都市部では市町村境界の関係もあって、狭い範囲に同様な施設が多数配置されるなど、非効率な部分も多い。都市部のバイオマス有効活用を進めるためにも、こうしたシステムの利用を普及させていくことが肝要であろう。
図:PEGASUS システム