(1)経済的に持続可能なバイオマス利用

 バイオマス利用はただ拡大すればよいというものではなく、あくまで「よい」=「持続可能な」バイオマス利用を推進する必要がある。
 まず経済的に、社会的意義など広い観点をカウントしてなお毎年、赤字が積み上がるのであれば、それは持続可能なバイオマス利用事業ではない。現場の創意工夫による利用システムの効率化や機器の性能向上とともに、バイオマス利用のコストパフォーマンス(費用対効果)を向上させるため、利用しやすい経済システムの構築も重要である。
 バイオマス利用推進に最も効果が高いと識者が見ているのが、ドイツやオーストリアで高い効果を上げているバイオマス発電等の固定価格での電力買取制度である。日本では、2003年よりRPS法が施行され、電力会社は、一定割合の新エネルギーを調達する義務を負うようになった。しかし、現在のところ取引量も少なく、買い取り価格は8〜11円/kWh程度である。
 また、北欧やドイツのように環境税(炭素税)を化石燃料に課すことも、バイオマス他の再生可能エネルギー推進の大きな力となるが、2005年11月の政府税制調査会は、2004年に続いて結論を先送りしている。一方、揮発油税は3兆円を越える税収がある。既存の電源特会や石油特会の税収の一部を再生可能エネルギー買取価格に上乗せすることがもし仮にできれば、バイオマス発電はビジネスとして軌道にのり、あとは市場メカニズムで拡大していくものと予想される。また、バイオディーゼルやバイオエタノールなどバイオマス燃料について、ヨーロッパ諸国の多くで実施されているように、免税措置をとることも非常に有効である。

(2)グリーン電力・調達の推進

 そうした社会制度が整備されるまでの間は、バイオマス由来の電力、熱、ガス、あるいはマテリアル利用を対象としたグリーン調達・購入の推進も、非常に有効な対策であろう(詳細は下記のコラム参照)。自治体の例では、東京都がバイオマス電力の購入を行っている。
 地域のバイオマス利用を考えるとき、もう一つ、重要なポイントがある。日本の利用可能と見られているバイオマス資源量の半分以上は、森林由来のバイオマスだが、日本は人工林の更新分でほぼ国内需要を賄う資源量を持つにも関わらず、木材需要の8割を輸入している。
 地域のバイオマス利用推進に当たっては、バイオマスのグリーン購入・調達と同時に、地域産材の建材・家具の利用推進、また農産物についても平行して進めることが望ましい。農林業の振興がともなわなければ、廃棄物バイオマスと輸入バイオマスの利用で終わってしまうからである。
 最近、ロハス(Lifestyle Of Health And Sustainability)と呼ばれる、「楽しみながら健康や持続性を重視する消費者」が増えつつある。ペレットストーブやグリーン電力証書の商品化などロハス層を取り込むことも、持続可能なバイオマス利用促進の大きな推進力となろう。

 バイオマス電力のグリー証明がついたカレンダー*1


*1 問合せ先:日本自然エネルギー  Tel:03-3510-0351