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トピックス 木質バイオマス利用をめぐる現状と課題

1 再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)の変更と概況

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1. FIT制度の現状と変更

2017年2月末時点のFIT制度におけるバイオマス発電の認定・稼働状況は、下表の通りである。

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バイオマス発電の認定容量(1時間で発電できる発電設備の規模)約600万kWの9割近くが一般木質バイオマス発電となっている。これほど多くの認定が集中した理由としては、一般木質バイオマス発電には輸入バイオマスが含まれること、電力買取価格が規模別となっていなかったため、大規模な発電所ほど見かけ上の利益が大きくなることが挙げられる。

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表:再生可能エネルギー電力固定価格買取制度(FIT)
におけるバイオマス発電認定状況

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2016年10月から12月にかけて、再生可能エネルギー調達価格等算定委員会が計6回開催され、そこでの議論の結果、バイオマス発電も含めて大きく制度が変更されることとなった。
 バイオマス発電は、規模によって発電効率が異なることから、一般木質バイオマス発電に2万kW以上で21円/kWhという新区分がつくられ、2017年10月以降より適用されこととなった。

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農産物については、2015年度の算定委員会で廃棄物(17円/kWh)とされたパームトランク(アブラヤシの幹)が、農産物の収穫に伴って生じるバイオマス(24円/kWh)へ変更されることとなった。

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図:木質等バイオマス発電の発電出力と発電端効率

図:木質等バイオマス発電の発電出力と発電端効率

出所:平成29年度以降の調達価格等に関する意見

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算定委員会のなかで、委員からバイオマス発電の持続可能性・合法性を担保していくため、海外の持続可能性基準の実態等を把握した上で、必要であれば対応を検討すべきであること、調達期間終了後のFITからの自立化の観点も踏まえ、熱電併給を促進していく観点から、事例の調査や支援の在り方の検討等を進めていくことが重要との指摘があり、「平成29年度以降の調達価格等に関する意見【*2】」にも反映された。

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さらに、これまで主にバイオマス専焼プラントを前提に調達価格の算定を行っていたが、石炭混焼の発電所については、「より低コストで実施できているとの指摘もあることから、FIT外の案件等も含め、既設の改造と新設の違い、混焼比率による違いなど、そのコスト実態を把握していく必要がある」との文言も同じく上の「意見」に入った。
 また、中長期的な価格目標については、バイオマスについては今回、設定されなかったが、燃料の集材の効率化等の政策と連携を進めながら、FITからの中長期的な自立化を図る、としている。

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一般木質バイオマス発電の新区分(買取価格引き下げ)が発表されて以後、2016年度末に1,100万kWの駆け込み申請があったとのことである。2016年12月末から2017年2月末の2カ月間で、一般木質バイオマスの認定容量は約200万kW増加しており、2017年度前半にも多くの認定申請があると考えられる。

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2. 改正FIT法の施行と事業計画策定ガイドライン

2012年7月のFIT制度開始以来、再生可能エネルギー電力は大きく伸長したが、その一方で、太陽光に偏った導入や国民負担の増大など、様々な課題が顕在化してきた。そのため、改正FIT法が2016年5月に成立し、2017年4月に施行された【*3】
 改正FIT法では、未稼働案件の排除と新たな未稼働案件発生を防止する仕組みや、適切な事業実施を確保する仕組みが取り入れられた。従来の発電設備を認定する制度から、発電事業の計画全体を認定する方法に変わり、発電設備の設計・施工に関する情報だけでなく、運転開始後の保守点検や運転終了後の撤去を含めた事業計画を申請時に提出する必要がある。バイオマスでは、燃料となるバイオマスを安定的に調達できる体制の構築や、同一種類のバイオマスを利用している既存事業者への配慮が要件になる。また、電力系統への接続契約の締結がFIT認定の条件となった。

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また、計画から稼働までのリードタイムの長い電源の導入のため、複数年の電力買取価格を予め提示した。バイオマス発電に関しては、2017年10月から2万kW以上の一般木質バイオマスが21円/kWh(税抜)となるほかは、2020年3月まで、従来通りの買取価格となる。また、地域住民とのトラブルが発生していることに対応し、改正FIT法では、関係法令の遵守、違反した事案には改善命令を行い、認定取り消しを行うことができる仕組みとなった。認定情報を自治体や関係省庁に公表するシステムの運用も開始した。さらに、燃料の需給管理体制を構築するため、認定審査の運用を強化し、燃料使用計画・実績に関わるデータや林野庁や都道府県との情報共有システムの構築を図るとしている。

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2017年3月に資源エネルギー庁より、「事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)」が発表された【*4】。同ガイドラインには、燃料の安定調達に関する計画の策定及び体制の構築として、「農作物の収穫に伴って生じるバイオマスの場合、流通経路が確認できること(トレーサビリティがあること)。また、持続可能な燃料使用に努めること」とある。この点についてさらに解説で、「国外から燃料調達を行うバイオマス発電事業者は、国内の燃料調達事業者だけに留まらず、原産国の搾油工場等まで遡って燃料安定調達協定等が確認できること。また、当該燃料安定調達協定等の締結においては、燃料利用の持続可能性担保についても考慮するとともに、燃料調達プロセスにおいて、トレーサビリティの確保とともに当該バイオマスが食用に供されないことの証明ができるよう考慮すること。」とあり、参考として持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)が挙げられている(コラム①参照)。

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