都バスにおけるバイオ燃料使用に対する懸念について
東京都が2007年10月より都バスにBDFを5%混合した軽油(B5)を導入することに対して、私たち、バイオ燃料の
持続可能性について強い関心をもつ団体は、下記の通り注意を喚起させていただきます。
「持続可能性に配慮した輸送用バイオ燃料利用に関する共同提言」(2007年1月発表)で私たちが指摘しているよ
うに、マレーシア、インドネシア等でのパーム油原料の生産・加工過程において、広大な面積の森林生態系の破壊、
生物多様性の消失、プランテーションでの労働問題、廃液の不適切な処理による汚染や温室効果ガスの大気中
への放出などの事態が生じています。
特に、パーム油の主要生産地であるボルネオ島、スマトラ島においてオイルパーム・プランテーション開発の火入
れなどにともなう泥炭層燃焼によって、日本のCO2排出量を超える大量のCO2が大気中に放出されていることが、
国際的にも重大な問題として浮上しています。
パーム油をめぐる生産業者、加工業者、消費財生産者など多様な関係者によって組織された「持続可能なパーム
オイルに関する円卓会議(RSPO)」によって、持続可能なパーム油の基準づくり等が進められていますが、現在の
ところ、こうした基準に基づくパーム油は流通していません。
そのため、パーム油が持続可能な方法で生産されたものであるかどうかは、直接契約等によりサプライチェーンが
明らかな場合でもなければ、確認できない状況にあります。
東京都が、先進的な温暖化防止対策を行っていることは高く評価されるべきであり、パーム油の状況についても理
解し、今回の原料調達においても一定の配慮をされていると伺っていますが、事業の推進と同時に、上述の問題に
ついてどう対処されるか明確に示していただきたいと考えています。
私たちは、輸送交通の温暖化防止対策としては、自動車交通への依存を大幅に減らす抜本的な交通システムの
見直しが必要で、バイオ燃料については持続可能な原料の供給・調達に関する予防的対策を整備した上で限定
利用にとどめるべきだと考えます。
東京都、新日本石油、トヨタ自動車、日野自動車と実用化を進めている第2世代BDFは、動物油など従来、再利用し
にくかった原料を使うことができるとのことであり、これは未利用資源の有効利用という点からも持続可能な利用と
言えるでしょう。
一方、パーム油を原料とするBDFは、持続可能性を確保する調達基準を設けないかぎり、利用を留保するべきであ
ると考えます。
また、東京都の本事業によって、今後、他の自治体や運送業界等において、持続可能性について十分な確認のなさ
れないまま、パーム油を原料とするバイオ燃料の導入拡大が誘引されることを懸念しております。
以上の点について、東京都および参加企業のご検討いただければ大変、幸いに存じます。
2007年10月10日
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
泊みゆき(Tel:047-389-1552 mail@npobin.net)
国際NGO FoE Japan
中澤健一(Tel:03-6907-7217 nakazawa@foejapan.org)
財団法人 地球・人間環境フォーラム 坂本有希、満田夏花(Tel:03-3592-9735
mitsuta@gef.or.jp)
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