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はじめに  バイオマス発電の終わりの始まり

世界気象機関(WMO)によると、2024年の世界平均気温は過去最高となり、産業革命前と比べた上昇幅は1.55℃であった【*】。現在、気温上昇を1.5℃以内に収める、という国際的な取り組みが進められているところだが、すでにそれを超え始めており、脱炭素化への取り組みを一層加速させていく必要がある。

バイオマスは世界で最も多く使われている非化石エネルギーであり、脱炭素化社会において非常に重要であることは言うまでもない。だが、当ネットワークが設立以来主張し続けているように、「悪い」バイオマス利用は、むしろ気候変動や持続可能な社会に悪影響を及ぼす。これまでにも知られてきたカナダの原生林由来の木質ペレットの問題に加え、今年は、インドネシアの熱帯林由来の木質ペレットが日本のバイオマス発電の燃料となっていることが判明した(コラム②)

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ここ1年で目立った動きの一つは、「バイオマス発電の終わりの始まり」がはっきりと姿を現したことだった。EUは、再生可能エネルギー指令(RED)Ⅲで森林由来のバイオマスを燃料とするバイオマス発電に原則、財政支援を行わないことを決定した。日本と並んで輸入燃料によるバイオマス発電を推進してきた韓国は、バイオマス発電への補助金を段階的に廃止すると発表した(トピックス 2)。そして日本でも、1万kw以上の輸入バイオマスを主な燃料とする一般木質バイオマス発電は、2026年度よりFIT/FIPの新規認定から外すことが決定された(トピックス 1)

燃料を購入し熱利用のない専燃木質バイオマス発電は、発電効率が低く、気候変動対策効果は熱利用や他の再生可能エネルギーより低く、コストが低下しにくく、FITのような助成制度がないと事業が成立しにくい。さらに森林、特に原生林を含む天然林を伐採した木材を燃料とする場合、気候変動対策に逆行し、むしろ、生物多様性の損失や社会的問題を生じさせる。

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また、バイオマス燃料の価格は国産・輸入ともに10年前の1.5~2倍と高止まりしている上に入手しにくくなっており、稼働を停止するバイオマス発電が続出している(トピックス 1)。それに加えて2024年以降も、木質ペレットの受け入れ・搬送・貯蔵施設等での爆発・火災事故が発生し、原因究明や対策のため長期間の停止や対策費の負担が、発電事業者にのしかかっている(トピックス2)。事業者が真に気候変動対策やSDGsを追及するのであれば、問題の多い大型専燃木質バイオマス発電からの撤退を検討してはいかがと考える。

もう一つの懸念は、石炭火力へのバイオマス混焼である。RE100は、石炭混焼を再生可能エネルギー電力から外した(2024年の動向・国内の動向)。混焼は規模が大きく、使用する燃料の量も多くなると、影響が大きい。武豊火力のように、無理にバイオマス混焼を行うのではなく、電力の高需要期のみ稼働させることで、CO₂係数を下げることも一案である(2024年の動向・国内の動向)

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これらの課題を克服するための提案として、本書では①木質ペレット工場の情報公開 ②FITバイオマス発電において天然林由来の木材を原則禁止とする ③FITバイオマス発電のGHG算定値等の公開 ④費用対効果を重視した気候変動対策 等を提案している(詳細はコラム④参照)。

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さて、日本も粛々と脱炭素対策を進めている。その一つとして、2026年より排出権取引が本格的に開始される。しかし、ここでバイオマス=カーボンニュートラルとして扱うのではなく、GHG排出量を考慮して取引されるのが適切ではないかと考える。

持続可能な航空燃料(SAF)などの液体燃料の拡大も予測されている。利用拡大は重要だが、脱炭素に実質として貢献すること、持続可能性に反しない利用は必須であろう。

今年も、こうしたことを踏まえつつ、持続可能なバイオマス利用を推進していきたいと考えている。

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<NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき>

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