平成26年度新エネルギー等導入促進基礎調査報告書によると、2013年度の国内のバイオマス導入実績は、発電が211.5万石油換算kl、熱利用が186.1万kl、合計397.6万klと推計され、清掃工場が4割を占めている(下表)【*46】。2011年度の推計値はそれぞれ193.9万kl、178.7万klで、2年間でそれぞれ8.4%、4.0%の増加となっている。
表:2013年度におけるバイオマス導入実績の推計結果
単位:石油換算万㎘
発電量 | 熱利用 | 合 計 | |
---|---|---|---|
清掃工場 | 105.2 | 56.0 | 161.2 |
発電事業 | 38.1 | 4.7 | 42.8 |
製材廃棄物 | 6.2 | 32.3 | 38.5 |
下水汚泥 | 4.4 | 9.9 | 14.3 |
食品廃棄物 | 1.3 | 5.8 | 7.1 |
バガス | 0.6 | 3.8 | 4.4 |
家畜排せつ物 | 2.0 | 0.3 | 2.3 |
その他 | 53.8 | 73.2 | 127.0 |
合 計 | 211.5 | 186.1 | 397.6 |
出所:平成26年度新エネルギー等導入促進基礎調査報告書
木材需給表によると、2014年の燃料材の総供給量は294万㎥で、そのうち輸入が110万㎥だった。この「燃料材」は、従来の薪炭材に2014年から木質バイオマス発電施設等においてエネルギー利用された燃料用チップを加え、項目名が変更された【*47】。
2014年の木質ペレット消費量は、国産と海外産がそれぞれ約10万t程度であったが、2015年には輸入が急増し、約15万tとなった【*48】。2015年のアブラヤシ核殻(PKS)等の輸入は、インドネシアから15.5万t、マレーシアから20.1万t、合計45.6万tと、2014年の23.4万tから2倍近く増加している【*49】。
2015年12月、政府の地球温暖化対策推進本部は、2030年に向けた日本の温室効果ガス削減目標として、2013年度比26%減を決定した。これを受けて経済産業省は、2030年における電源構成見合いのCO2排出原単位(0.37kg/kwh)を実現するため、発電事業者に対する省エネ法の規制強化をすすめ、10万kW規模の中小石炭火力は、バイオマス混焼かコジェネでないと今後の新設が事実上困難になると見られる【*50】。またエネルギー供給構造高度化法に基づく判断基準を改定し、電力供給量が5億kWh以上の特定エネルギー供給事業者に、非化石電源供給比率を原則44%の達成計画の提出を求め、その遵守を促す。
一方、電力自由化にともなう制度変更により、特定規模電気事業者(PPS)の売電収入が減り、バイオマス発電等の電力買取価格が維持できない可能性がある。資源エネルギー庁は、5年間の適用を猶予する方針を打ち出した。
2015年12月、与党は温暖化対策税を活用して木質バイオマス利用などの充実を図ること、森林環境税の創設など新たな仕組みを検討することを盛り込んだ2016年度税制改正大綱を決定した【*51】。また、2016年4月より、地球温暖化対策のための税が引き上げられた。石油(260円/kℓ)、ガス(260円/t)、石炭(260円/t)が引き上げられる。
自民党資源エネルギー戦略調査会は、2015年8月、再生エネルギー熱の導入支援を最大限促すべきといった内容を含む「再生可能エネルギーによる地方創生戦略」をまとめた【*52】。また民進党は、2016年4月、「次の内閣」において、分散型エネルギー利用の促進に関する法律案、熱エネルギー利用促進法案、公共施設省エネ・再エネ義務化法案等を議員立法として審査し了承した【*53】。
2016年2月、群馬県川場村と東京都世田谷区が「川場村における自然エネルギー活用による発電事業に関する提携・協力協定」を締結した。川場村の木質バイオマス発電事業(45kW)に、川場村村民および世田谷区民が寄付や投資を通じて参加する仕組みや、川場村産の木質バイオマス発電による電気を区民が購入できる仕組みを検討していくとのことである【*54】。
また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、バイオマスの調達、輸送、エネルギー変換などの諸要件を分析した「バイオマスエネルギー地域自立システムの導入要件」をまとめた【*55】。
再生可能エネルギー買取制度により、メタン発酵、廃棄物発電も大きく増加した。メタン発酵の導入施設は増加が著しく、参入する事業者も増えたが、安定した技術力を持つ企業はまだ限られている。
2016年1月、下水汚泥のエネルギー化を2015年〜20年度に15%から30%へと倍増させる目標を含む、第4次社会資本整備重点計画が閣議決定された【*56】。また国土交通省は、下水処理場汚泥の低コスト固形燃料化技術のガイドラインを策定した【*57】。
メタン発酵施設の大きな課題は、発酵後の消化液の処理である。これを水処理すると、エネルギー収支および経済性の点でマイナスになる。乳牛用飼料栽培農地への自家消費(町村農場等)、地域の農家へ普及啓発・散布手段の提供による施肥(大木町)、農地還元できる量に処理量を抑える(京丹後市)、下水処理場に併設し、下水処理設備に投入(珠洲市)、乾式メタン発酵で消化液の発生量を抑え、併設の焼却炉で処理(南但クリーンセンター)、残渣を脱水処理・乾燥させ、燃料利用(長岡市)等、さまざまな対策が取られている。
金沢市は、2014年より一般廃棄物処理場の西部環境エネルギーセンターに間伐材を混焼する事業を行っている。同センターは、廃棄物処理というより温暖化対策の一環として、地域のエネルギー供給施設として位置づけられ、そこから間伐材混焼のアイデアも浮上した。市営造林を森林組合が間伐し、林道近くから出た300tを仮置き、破砕処理し、投入した。従来から剪定枝を破砕してエネルギーセンターで燃焼させており、その設備を利用しているため、付加的な初期投資はかかっていない。金沢市ではこの間伐材由来電力をFITではなく、新電力に販売しているが、間伐材の部分は手続きを行えば、32円/kWで買取可能である。
西部環境エネルギーセンターへ運搬される間伐材(写真提供:金沢市)
また、豊田市は一般廃棄物ごみ発電施設の助燃材として使用していた天然ガスの代替に、間伐材を使っている。
専燃木質バイオマス発電の建設は事業リスクが高いが、こうした廃棄物発電への混焼であれば、無理のない利用が可能であり、他地域でも検討の余地があると考えられる。
鳥取県智頭(ちず)町は、人口7,500名の1,000m級の山に囲まれた森林率90%の町で、智頭杉の産地として知られ、森をフィールドにした幼児教育を実践する「森のようちえん」で有名な地域でもある。そこに、福島原発の事故をきっかけに移住してきた若者と地元の古老の出会いから大麻栽培の復活が実現した。町長、町役場の連携によって、交渉から55日間という異例のスピードで鳥取県知事から大麻栽培者第一号の許可を受けたのである。
2013年に0.23haからスタートして、盗難防止のためマリファナ効果のない産業用大麻の品種で栽培している。栽培を聞きつけた隣の集落の古老から「昔使っていた大きな桶がある。ぜひ使ってほしい」という話があった。現在は誰もやっていない桶蒸法(おけむしほう)と呼ばれる幻の繊維加工法であった。同年9月に桶蒸公開実験として試みると、2週間前の広報にも関わらず200名の参加者が集まった。このやり方の実施はまさに60年ぶりの復元で、日本唯一の取り組みであった。
2014年には、0.68haに拡大し、「智頭麻まつり」を9月に開催し、30名ほどの限界集落に500名以上の人を集めた。このことにより、地元メディアも含めて数多くのマスコミに大きく取り上げられ、智頭町=大麻栽培で地域おこし=ユニークな町として知られるようになってきた。2015年に1.3haに拡大し、全国作付面積で約6ha、栽培者35名しかいない中で、わずか3年目に栃木県鹿沼市に次ぐ、第二位の生産地域となった。現在は、(株)八十八やという法人として栽培を行い、下記のような事業を展開している。
最近では、現首相の明恵夫人が麻畑と共に有名雑誌に掲載されたこともあり、国産の麻商品に関心のある企業や地方自治体が数多く視察に来る。栽培が始まってから「森のようちえん」の存在との相乗効果により、20代から40代前半までの14世帯が町に移住してきた。
課題は、土壌改良して生産量を上げ、売上を伸ばし、地域の雇用を創出することである。元々、麻は中央アジアの乾燥地帯が原産地であることから、水はけの悪い土壌では生育不良になる。山地で田んぼや耕作放棄地であったところを畑に変えるための土壌改良が必須なのである。大麻栽培を核にして地域活性化の成功例となるかどうかは、この数年が勝負所であろう。
60年ぶりに復元した桶蒸法
町が新たに発行した麻の漫画本
<NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事 赤星 栄志>