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東日本大震災・原発事故と
今後のバイオマス利用を考える
2011年の動向
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2011年の動向

2. 国内の動向

(1)概要

2009年に日本国内で利用されたバイオマスエネルギーは、エネルギー白書2011【*21】によれば454万kl(石油換算)で、一次エネルギー国内総供給量5億6176万klに占める割合は0.81%となっている。

電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)におけるバイオマス発電の総認定設備件数は、2011年12月末時点で376件である。認定設備総発電出力は同じく2011年10月末時点で19,821,844 kWで、バイオマス発電の出力に使用燃料のバイオマス熱量比率を乗じた出力は2,304,069kW(石炭火力発電へのバイオマス混焼や清掃工場などでは、バイオマス以外のものも燃やされるため)である。2010年度に同法に基づき供給されたバイオマス電力は、3,744,516,697kWhで、新エネルギー電力供給量全体の37%となっている【*22】。

自然エネルギー白書2012【*23】によれば、2010年度末でのバイオマス発電の設備容量の累積導入量は、図1にあるように325.5万kW、2010年度に新規導入された発電出力は約9.6万kWであり、3%強の伸び率であった(自然エネルギー白書では、熱量比60%程度以上をバイオマス発電と定義しているため、RPS制度での数値と異なっている)。燃料別内訳は、2010年度末時点で、一般廃棄物発電が55%、産業廃棄物発電が36.7%と、廃棄物発電で全体の9割以上となっている。一方、木質バイオマス発電も、RPS法施行および石油価格が高騰した2003年頃より急速に伸びており、2010年末時点で、設備容量の累積導入量は、約26万kWとなっている(図2)。

図1:バイオマス発電導入量推移

図1:バイオマス発電導入量推移

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木質バイオマス発電

図2:木質バイオマス発電
出所:自然エネルギー白書2012(環境エネルギー政策研究所)

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㈱森のエネルギー研究所によると、2011年9月時点で、国内における木質ペレットボイラーは272箇所以上の施設に導入されており、台数は324基以上となっている。導入箇所は、岩手県、北海道、長野県、山口県の順に多い。ペレットボイラーの総出力は約80,000kW。総ペレット消費量は26,280t/年、販売額は約7億8,000万円と推計される。

木質チップボイラーは、全国で107箇所以上の施設に導入されており、北海道、岩手県、山口県の順に多くなっている。総出力は約100,000kW。これらのボイラーで利用されているチップの総消費量は94,612t/年、販売額は4億7,000万円と推計される。導入施設の種類では、宿泊・温泉施設が最も多く、次いで工場、学校・保育園等となっている。

二次燃焼形式の高効率(燃焼効率80%以上)の薪ボイラーでは、導入数は8個所、合計15基が岩手県、福島県、新潟県、栃木県、山梨県、大阪府、和歌山県、高知県に導入されており、総出力は1,073kWとなっている【*24】。

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(2)炭素税導入へ(FIT、震災関連の政策動向は、トピックスを参照)

2012年3月、野党の反対で2011年度には流れた地球温暖化対策税(炭素税)を含む平成24年度税制改正法が成立した。2012年10月より導入される。2016年までに引き上げる税率は、CO2排出量1t当たり約300円。原油・石油製品は1㎘当たり760円、ガス状炭化水素(天然ガスなど)は1t当たり780円、石炭は1t当たり670円、税収増は約2,400億円となる。ただし急激な負担増とならないよう経過措置を講じるとしており、2012年10月に引き上げられる税率は前記した税率の約1/3で、2014年4月および2016年4月に段階的に引き上げるとしている。

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(3)メタンガス利用の動向

日本の利用可能なバイオマスの半分は、廃棄物系バイオマスである。廃棄物系バイオマスのうち、建設廃材、製材廃材、あるいは一般廃棄物のうちの可燃ごみについては、バイオマス利用が進んでいる。一方、水分量の多い食品廃棄物、下水汚泥、家畜糞尿などのうちマテリアル利用されていないものの利用はあまり進んでいない。

海外、例えばスウェーデンでは、複数の自治体が所有する公社に乳業からの残さ、家畜糞尿、食品廃棄物、生ごみなどを受け入れて効率的にメタンガスを生産している【*25】。

木質バイオマス発電

スウェーデンのバイオガス施設
写真提供:矢作 ルンドベリ 智恵子

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日本では、一般廃棄物の生ごみが環境省および自治体、事業所からの食品廃棄物・家畜糞尿・集落排水汚泥が農水省、下水汚泥は国交省と管轄が分かれているために施設が乱立することにもなったが、地域で集約して利用できるような改革が望まれる。例えば、2011年5月に完成した富山県黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設では、下水道汚泥、農業汚泥、コーヒーかすを混ぜてメタン発酵させている【*26】。他にも水分量の多いバイオマスを複合的に処理する施設はあるが、こうした取り組みにより効率的な利用が進むことが期待される。あるいは、熱利用などオンサイトでの効率的な利用の促進も図られるべきであろう。

また、食品残さ由来のバイオガスの都市ガス導管への注入が始まり【*27】、国土交通省が下水汚泥固形燃料のJIS化を検討するといった動きも出ている。


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