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トピックス
東日本大震災・原発事故と
今後のバイオマス利用を考える
2011年の動向
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はじめに 「バイオマスはカーボンニュートラルか」

2011年を振り返ると、東日本大震災・原発事故以降、怒涛のような一年だった。311は「第二の戦後」とも呼ばれ、脱原発の動きは一挙に進み、バイオマスをはじめとする自然エネルギーへの追い風が暴風雨のように吹く一方で、原子力発電所の再稼働をめぐる議論も白熱化している。2012年7月に施行予定の再生可能エネルギー電力買取制度(FIT)の買取価格や区分についても、激論が交わされている。また、2012年10月から、地球温暖化対策税(炭素税)も導入されることとなった(「国内の動向」参照)。これまで長年にわたり提案してきた制度が、一挙に進みだした感がある。

ただし、本文でも強調している通り、エネルギーの総合的な政策、林業や環境、農業の六次産業化などの地域振興といった包括的な政策の中に、バイオマス利用も位置付ける必要がある。バイオマスのエネルギー利用は熱が主であり、電力は言わば「おまけ」なのだが、FITの議論のなかで吹っ飛んでしまった印象すらある。それは、東日本大震災の被災地復興においても同様で、被災材などのバイオマス利用イコール発電という風潮に、危機感を抱いている。また、被災地のバイオマス利用では、放射能濃度の高い灰の処理問題も含め、適切な形での利用が不可欠となる。

バイオマス産業社会ネットワーク設立以来の理念である、「バイオマスの持続可能な利用」だが、ここで声を大にして伝えなければならないことがある。それは、「バイマスは本当にカーボンニュートラル(炭素中立)か」である。京都議定書においてバイオマスはカーボンニュートラルとされてきたが、それは一定の想定にもとづいたものにすぎない。実際には、もとの炭素蓄積量が回復しない場合もあるし、回復しても長期にわたるタイムラグが生じる場合もある。(「個体バイオマスの持続可能性」参照)

さらに、ほとんどのバイオマスは、生産、採取、運搬、加工などで何らかの形で化石燃料が使われている。メタンガスや亜酸化窒素などCO2以外の温室効果ガス(GHG)もその過程で排出されることもあり、それらを合計すると、石油以上の温暖化ガス排出になるケースもある。もちろん、GHGだけでなく、生物多様性や生態系サービスの維持、水資源循環、さらにランドラッシュと呼ばれる深刻な土地利用をめぐる問題(「ランドラッシュ(農地収奪)と持続可能なバイオマス利用」参照)や労働問題、食料やマテリアルなど他用途との競合など、ほかの持続可能性にも配慮しながら利用する必要がある。その一方で、適切な利用を行えば、雇用や持続可能な地域づくりに役立つすばらしい資源にもなりうる。

それらを考えると、東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県大槌町吉里吉里で、被災者らが林業を始めた(コラム1コラム2参照)ことは、これからの持続可能な社会に向けた動きの象徴のように思える。こうした怒涛のような日々だが、少しづつでもあるべき方向を探し続けたいと考える。

また表紙の一番下の写真は、林業女子【*2】である。自然体で楽しみながら林業に関わろうとする彼女たちにも、エールを送りたい。

<NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき>

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