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トピックス 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)をめぐる現状と課題

1 一般木質バイオマス発電の大量認定と制度の大幅な変更

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1. 予想外の大量駆け込み認定

2017年3月、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)におけるバイオマス発電の認定は、前年の約3倍、1,241万kWへと急増した(下図)。これは、2030年の長期エネルギー需給見通しのバイオマス発電の最大量728万kW(うち230万kWはFIT導入前の稼働量)をはるかに超える量となっている。その後も認定は増加し、2019年9月には、1,373万kW、FIT以前の導入量を加えると1,604万kWに達した(2016年6月までに認定された案件のうち、改正FIT法で接続契約が確認できず失効したものがあるため、コラム②の上の表と差が生じている)。さらにFIT認定されたバイオマス発電のうち、パーム油、アブラヤシ核殻(PKS)、木質ペレットなど輸入バイオマスを主に使用する一般木質バイオマス発電が92%を占める。

経済産業省によると、この認定量のうち約4割はパーム油を燃料とするもので、もしこれらすべてが稼働すれば、年間約900万トンのパーム油が必要になる。2016年の日本のパーム油輸入量は65万トンであり、仮に認定されたパーム油発電の1割が稼働したとしても、甚大な影響が予想された。

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図:FITにおけるバイオマス発電の稼働・認定状況

図:FITにおけるバイオマス発電の稼働・認定状況

資源エネルギー庁Webサイト 固定価格買取制度市町村別認定・
導入量等より
バイオマス産業社会ネットワーク作成

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この時期にバイオマス発電の認定が集中した背景には、2017年4月から改正FIT法が施行され、接続契約の締結が必要になるなどの認定の条件が強化されること、2017年10月より、2万kW以上の一般木質バイオマス発電の買取価格が24円/kWhから21円に引き下げられること、の二つの要因があったと考えられる。

また、下図にあるように、日本のFIT買取価格が海外と比較して著しく高いことから、生産国ではなく日本にバイオマスが輸入される要因になっていると考えられる。だが、1,200万kWのバイオマス発電を動かすためには、数千万トン規模のバイオマスが必要となる。また、国内のプラント建設能力の面からも数年以内にすべてが稼働することは到底不可能と考えられた。

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図:バイオマス発電(一般木材等(5,000kW))の海外の買取価格の推移

図:バイオマス発電(一般木材等(5,000kW))の海外の買取価格の推移

出所:調達価格等算定委員会「平成30年度以降の調達価格等に関する意見」【*1】

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パーム油発電は、木質チップやペレットなどを使う固体バイオマス発電とは異なり、すでに成熟した技術であるディーゼル発電で、パーム油も大量に国際的に流通している商品であり、これまであまり流通していなかったPKSやFSCなどの森林認証を得た木質ペレットのように調達に手間がかからない。そうしたことから、一見、事業が容易く見え、パーム油発電事業を営業する企業が突如多数、出現した結果が、この急増となったと考えられる。

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コラム① 2017年後半のバイオマス産業社会ネットワーク等の活動

2017年の大量駆け込み認定、特にパーム油発電の大量認定は、持続可能なバイオマス利用への大きな脅威と考えられた。

パーム油発電は、食料と競合し、農園開発がボルネオ、スマトラなど貴重な熱帯林減少の主要因となり、生物多様性損失、土地をめぐる紛争、児童労働、強制労働など深刻な労働問題等を引き起こしているだけでなく、泥炭地開発を考慮したライフサイクルアセスメント(LCA)によるCO2排出は石炭よりもはるかに高く、温暖化対策に逆行する。

例えば、2017年5月、レインフォレスト・ファウンデーション・ノルウェーが、間接的土地利用変化を考慮するとパーム油は化石燃料の何倍も炭素排出が多いとレポートで指摘し、2017年6月、ノルウェーはパーム油を原料にしたバイオ燃料の公共調達を禁止した(下図は、同レポートに掲載されたもので、国際食糧政策研究所(IFPRI)や米国環境庁(EPA)などによるいずれの調査でも、パーム油のCO2排出係数が化石燃料より高いことを示している)。米国、EUにおいてもパーム油の持続可能性の問題から、燃料としての利用を禁止あるいは禁止する方向にある。

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化石燃料ディーゼルと比較した、パーム油バイオディーゼルのライフサイクル炭素排出係数

化石燃料ディーゼルと比較した、
パーム油バイオディーゼルのライフサイクル炭素排出係数

出所:Rainforest Foundation Norway, For peat's sake Understanding the climate implications of palm oil biodiesel consumption, May 2017

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パーム油発電は、FIT法の目的である「エネルギーの供給に係る環境への負荷の低減、我が国産業の振興、地域の活性化」のいずれにも貢献せず、FITの対象から外すべきと考えられる

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こうした状況を受けて、NPO法人バイオマス産業社会ネットワークは、他の団体等と協力し、以下のような活動を行った【*】。①2017年10月、バイオマス産業社会ネットワーク拡大研究会2017「持続可能なバイオマス発電燃料の調達と持続可能性基準導入に向けて」の開催 ②11月、「FITバイオマス発電についての提言」を発表 ③12月、シンポジウム「パーム油発電の環境・社会影響を考える-ESG投資の観点から-」を開催 ④2018年1月バイオマス産業社会ネットワーク第171回研究会「RSPO(持続可能なパームオイルのための円卓会議)等の認証パーム油の調達に関わる課題」を開催、そしてこれらで得られた知見を随時、経済産業省、調達価格等算定委員会委員、メディアなどに情報提供した。

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)
バイオマス発電に関する提言 2017.11.5

1.発電規模による上限を課す

2.段階的にコジェネレーション(熱電併給)に誘導する

3.持続可能性基準を導入する

4.パーム油はFITの認定対象から外す

5.PKSの調達価格を見直す

6.石炭混焼は、FITと別枠での支援を検討する

7.バイオマス発電燃料の持続可能な利用に関し、継続的に調査および検討を行う

【提言団体】
 NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク

【賛同団体・個人】
 一般財団法人 地球・人間環境フォーラム/国際環境NGO FoE Japan/
 熱帯林行動ネットワークJATAN/認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所/
 一般社団法人 持続可能な森林フォーラム/株式会社abovo/中村建設株式会社/
 ウータン・森と生活を考える会/株式会社バイオマス利活用技術舎(2017年12月26日現在)

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2. 調達価格等算定員会での議論と制度の変更

パーム油発電等のここまでの急増は、経済産業省にとっても想定外であり、迅速な対応がなされた。2017年9月から調達価格等算定員会が招集され、計8回にわたって議論が行われた。その結果、一般木質バイオマス発電は以下のように制度が変更されることとなった。

1)2016年度末において、2017年度から19年度における一般木質バイオマス発電は2017年9月までがすべての規模で24円/kWh、2017年10月以降は2万kW以上は21円/kWhと定められていたが、想定をはるかに超える大量の認定が集中したため、2018年度、19年度の調達価格等について、改めて設定する。

2)パーム油発電は、コスト構造も固体である木質バイオマス発電とは異なるため、一般木質バイオマス発電とは別の区分を設定する。バイオマス液体燃料区分は、パーム油を利用するものに限り、パーム油以外については、委員会においてその都度コスト構造を踏まえた適切な区分について議論する。(17年度までの認定案件でパーム油以外の燃料を利用するものについては、FIT制度の支援対象とする)

3)パーム油については、トレーサビリティと合法性を担保するために、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)認証のうち、アイデンティティプリザーブド(IP)、セグリゲーション(SG)といった非認証油と分別管理されているものが求められる。

4) 2018年度から、一般木質バイオマス発電は1万kW以上を入札の対象とし、2018年度の入札の規模は18万kW、パーム油は2万kWで、パーム油についてはすべての規模が入札の対象となる。

5)設備発注期限を認定日から2年(ただし、環境アセスメント等の合理的な期間を除く)、運転開始期限は認定日から4年で、超過した場合は、調達期間を超過期間分1カ月単位で短縮される。

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図:FITにおけるバイオマス発電の稼働・認定状況

図:2018年度以降のFITにおけるバイオマスの主な変更点と調達価格

出所:いずれも経済産業省資料

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また、パーム油以外のバイオマスについても、現地燃料調達事業者等との燃料安定調達協定等を確保することが求められることとなった。

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3. 事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)の改定

今回の制度変更にともない、事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)も2018年4月に改定された【*2】。改定後の要点は、以下のとおりである。①輸入バイオマスでは当該計画が既存用途へ与える影響を最小限にするよう努めること ②加工・流通を行う取扱者において、持続可能性(合法性)が証明された木材・木材製品を用いることを証明する書類の交付を受けること ③国内調達事業者だけではなく現地調達事業者等との(直接又は商社等を通じた間接の)燃料安定調達協定等を確保すること。これについては、2018年3月末以前に認定を取得した案件については2019年3月末までに行うこととされ、すでに認定・稼働した案件にも適用される。

また、農産物の収穫にともなって生じるバイオマスに関し、①パーム油等バイオマス液体燃料は、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)のIP、SGなど非認証油と分別管理され、労働の評価などの合法性が証明されていること ②食用に供されないことの証明ができるよう考慮すること ③PKS、パームトランクについては、原産国の搾油工場等までさかのぼって燃料安定調達協定等が確認できること ④パーム油、PKS、パームトランク以外の農産物の収穫に伴って生じるバイオマスは、あらかじめ経済産業省に相談すること

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RSPO認証のIP、SGとは、下図にあるように、マスバランスやブックアンドクレームと異なり、認証を得た農園から搾油工場、製油所等を経て消費者に至るまでのサプライチェーンで、他の非認証パーム油とは混ぜ合わされることなく、認証油だけで最終製造者まで受け渡される方式である【*3】

IP、SGに該当するパーム油は、パーム油生産の18%程度とされるRSPO認証油のさらに一部であり、パーム油を燃料とするバイオマス発電において安定的に調達する難易度は相当高いと考えられる。

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図:FITにおけるバイオマス発電の稼働・認定状況

図:RSPO 4つのサプライチェーンモデル

出典:WWWFジャパン

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4. 今後に向けて

急増したバイオマス発電の認定だが、接続契約の締結や燃料の安定的調達の制約などから、実際に稼働するのは、2〜3割程度と見られている。パーム油発電については、大量のIP、SGのパーム油の調達が難しく、レピュテーション(評判)リスクもあることから、新規稼働はかなり限定的になると考えられる。

また、FITの事業計画認定情報は、経済産業省のWebサイトで公開されるようになったが、稼働しているかどうかや、混焼のバイオマス比率が記されていない、という問題がある【*4】。関係者が適切な対応をとるためにも、早急に実際の稼働等についての情報公開がなされることが望まれる。

2018年5月、経済産業省は「バイオマス発電を含めたバイオマス利用のあり方に係る調査報告書」を発表した【*5】。バイオマスの持続可能性、熱電併給、石炭混焼等について内外の情報を精査したものであり、今後の議論の基礎となるものと考えられる。

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コラム② FITにおける木質バイオマス発電の動向

最も深刻な環境・社会問題を抱える農産物

2017年9月末時点での、FITにおけるバイオマス発電の稼働・認定状況は下表の通りである。この表では、一般木質バイオマス発電の認定が11,678万kWと膨大になっているが、2017年4月のFIT法改正により、電力系統への接続契約等が条件づけられた。駆込認定の多くはこの条件を満たせなかった模様である。

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表:再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)における
バイオマス発電の稼働・認定状況(2017年9月末時点)

  メタン
発酵
未利用木質 一般木材 リサイクル
木材
廃棄物 合計
2000kW
未満
2000kW
以上
稼働
件数
110 15 38 25 4 73 265
認定
件数
229 61 54 348 10 90 792
稼働
容量
kW
33,675 11,186 390,214 475,258 39,732 213,916 1,163,981
認定
容量
kW
91,701 73,265 513,448 11,678,456 143,682 248,045 12,748,597

出所:資源エネルギー庁Webサイト【*1】

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FIT法改正による新制度への認定手続きが終了したバイオマス発電は、2018年5月末時点で、未利用木質が38件30.7万kW、一般木質が173件2,020万kW(混焼を含む。バイオマス分は500万kW程度と推定される)である【*2】。

2017年から2018年前半に稼働した主な木質バイオマス発電等は、下記の通り、約43万kWとなっている。輸入バイオマスによる5万kW規模の発電所も稼働し始めた。三重県松坂市のバイオマスパワーテクノロジーズなどが、樹皮も燃料に使っており、地域資源の有効活用例として注目される。

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表:2017年〜2018年前半に稼働した主な木質バイオマス発電等
※FIT開始以降に稼働・計画されている主な木質バイオマス発電等

都道府県 市町村 事業主体 規模kW 規模【*】 稼働時期 FIT認定 備考
北海道 苫小牧市 苫小牧バイオマス発電 6,194 6,194 2017.4運転開始 未利用材 三井物産、イワクラ等
北海道 石狩市 エネサイクル 1,200 1,200 稼働 未利用材  
青森県 八戸市 八戸バイオマス発電 12,400 12,400 2018.4 営業運転開始 一般木質 住友林業、住友大阪セメント,JR東日本。間伐材、製材端材、鉄道林間伐材、PKS等18万t
宮城県 石巻市 日本製紙 149,000 25,372 2018.3発電開始 一般木質 石炭混燃。木質バイオマス最大30%。未利用材、輸入木質ペレット(カナダ、ベトナム)
宮城県 仙台市 恵和興業 40 40 2017.4稼働 未利用材 ケイワ・エネルギーステーション仙台 Volter
秋田県 潟上市 秋田農福連携発電所 40 40 2017.6稼働 未利用材 農業ハウスで熱利用も Volter
山形県 長井市 NKCながいグリーンパワー 1,990 1,990 2017.7営業運転開始 未利用材 2.6万tの未利用材・一般材等
山形県 米沢市 DSグリーン発電米沢 6,250 6,250 2018.1稼働 一般木質 間伐材等8万t
福島県 西郷村 藤田建設工業 25 25 2017.3稼働   エントラーデ社の小型ガス化コジェネ ペレット
福島県 相馬市 相馬エネルギーパーク合同会社 112,000 35,840 2018.3運転開始 一般木質 木質ペレット34%混焼に成功
茨城県 土浦市 つくばグリーンパワープラント 2,000 2,000   一般木質 ディーゼル発電 農業廃棄物および廃食油等
茨城県 神栖市 神栖パワープラント 38,850 38,850 2017.7営業運転開始 一般木質 パーム油
茨城県 東海村 東京電力フュエル&パワー 2,000,000 49,120 2017.6混焼開始 一般木質 石炭火力の1号機、2号機に3%、4.5%木質ペレットを混焼 常陸那珂火力発電所
茨城県 太子町 だいごバイオマス発電所 1,990 1,990 2018.3稼働開始   未利用材 クリハラント
群馬県 前橋市 前橋バイオマス発電 6,750 6,750 2017.4運転開始 未利用材 間伐材、製材端材8万t 関電工等
群馬県 川場村 森林の発電所 45 45 2017.5稼働   製材端材 Spanerのコジェネ 川場村、清水建設、東京農大 世田谷区とエネルギー地域連携
新潟県 三条市 SGETグリーン発電三条 6,250 6,250 2017.8運転開始 未利用材 間伐材、PKS
福井県 敦賀市 敦賀グリーンパワー 37,000 29,600 2017.7運転開始 一般木質 主に国内外の未利用木質チップ 米、豪からの輸入チップ 丸紅
福井県 あわら市   40,530 219   一般木質  
岐阜県 高山市 飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所 182 182 2017.4稼働 未利用材 ペレット ブルクハルト社コジェネ
愛知県 半田市 サミット半田パワー 75,000 57,000 2017.10稼働 一般木質 PKS、木材チップ
愛知県 武豊町 中山名古屋共同発電 110,000 33,000 2017.9稼働 一般木質 石炭火力に30%バイオマス混焼。木質ペレット等
三重県 松坂市 バイオマスパワーテクノロジーズ 1,990 1,990 2018.1稼働 建設廃材 樹皮等 インテグリティエナジー 大阪ガス子会社出資
兵庫県 丹波市 パルテックエナジー 22,100 22,100 2018.2稼働 一般木質 間伐材、製材端材、建設廃材、PKS 21万t 兵庫パルプ
鳥取県 鳥取市 三洋製紙 16,700 16,533 2017.1稼働 一般木質 木質チップ、PKS、石炭
広島県 呉市 中国木材 9,850 9,850 2017.7売電開始 未利用材 製材端材、未利用材
愛媛県 松山市 えひめ森林発電 12,500 12,500 2018.1営業運転開始 一般木質 未利用材8.3万t、PKS等3.2万t エネ・ビジョン 松山バイオマス発電所
福岡県 大牟田市 シグマパワー有明 50,000 46,000 2017.4営業運転開始 一般木質 PKS約20万t 石炭火力をリニューアル
宮崎県 串間市 くしま木質バイオマス 1,940 1,940 2018.3稼働 未利用材 大生黒潮発電所 ブルクハルト社のコジェネ10台 シン・エナジー
425,269

*  バイオマス分の発電規模
** 経産省資料、プレスリリース、報道記事等によりバイオマス産業社会ネットワーク作成

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