「アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ」
 アマゾン川流域で行われているポエマ(アマゾン貧困撲滅環境)計画では、アマゾンの農地で栽培された植物繊維を現地で加工して、自動車部品に利用している。地域の大学がコーディネートし、企業や自治体、国際機関が関わり、産業育成・食糧自給・教育・保健衛生等、地域の総合開発プロジェクトに成長した。
 アマゾンのプライヤ・グランジ村では、約200人の村人が子どもも含めて全員討論で何度も何度も話し合い、さまざまな作物を一緒に植えるアグロフォレストリー農法の導入や植物繊維製自動車部品の製造、そこから上った収益を識字教育などに使うことを決め、実施し、成果を挙げている*。

「もう一つの発展」を進めるエクアドルのコタカチ郡
 エクアドル初の先住民の知事となったコタカチ郡のアウキ・ティトゥアニャ氏は、銅山開発に代表される従来型の開発ではなく、有機コーヒー、エコツアー、フェアトレードといった持続的な発展手法を取り入れて、住民に支持され、先日、三選を果たした。この地域には、通常の代議制議会とは別に直接民主主義の「民衆議会」があり、子どもを含めそこの住民誰もが参加して、地域の問題を話し合っている。代議制議会では、民衆議会の決議を取り入れなければならないシステム上の規定はないのだが、無視すれば次回の選挙に直接反映するため、民衆議会の決定は、代議制議会でも取り入れられるという。
 アウキ知事の政策の一つ、識字教育プログラムで文字を読めるようになった女性たちが、次に何かしよう、と有機コーヒー栽培などの持続的プログラムを自発的に広げているという。

サバンナに出現した自給自足のコミュニティ
 持続可能な地域発展モデルの例として最近、注目を浴びるようになってきたコロンビアのガビオタスでは、オリノコ河上流の広大な草地にカリブ松を植え、松脂から工業原料を採取、加工して販売。カリブ松の材はバイオマス発電に利用、オイルパームも栽培し、バイオディーゼル燃料に加工してコミュニティ内で利用している。熱帯雨林の再生にともない、雨が降るようになった現地では、飲料水をボトリングして販売するようになった(同地域では、石油より飲料水の方が値段が高い)。これまで価値がないと思われていた土地に、付加価値を生む自給自足のコミュニティができた。
 ここでも、松の苗を植える機械を開発したり、飲料水の汲み上げは子どものシーソー遊びでできるようになっている(写真)といった住民の発意による工夫が、随所にある。

 これら三つの例に見るように、利益を無限に追求するのではなく、地域の生活や生態系を守りながら、ほどほどに暮らせるだけ稼ぐ。従来の資源大量消費とは違う、持続可能な地域づくりの花が世界各地で開き始めている。


ココナツ繊維製自動車部品を製造する農民(ポエマ計画)


写真提供:ゼリ・ジャパン

*参考:『アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ』(築地書館)