ドイツのバイオマスからのメタノール製造プラント事例(SVZ社)
燃料電池の燃料として、メタノール(メチルアルコール)が、最近注目を浴びている。通常は、天然ガスから製造されるが、木くずなどバイオマスから製造することもできる。日本でもそうした研究が行われているが、問題は、天然ガス製のメタノールに比べてコストが高くつくことがネックになっている。 ドイツに、バイオマスからメタノールを製造し、採算がとれているプラントがある。 統合ドイツの激動
SVZ社のプラント
併設されている発電所
SVZ社の前進のプラントでも、天然ガスに対抗しようとコストを下げたが、価格競争ではかなわなかった。このままでは、工場は閉鎖になり、技術者たちは失業の危機に瀕していた。 ガス化を行うために、酸素と蒸気を混ぜたものを使う。ガスジェネレーターの中の廃棄物が、高圧、高温でさまざまな化学反応が起こる。その後、ガスを洗浄して硫黄分を除去する。この硫黄分は石膏にして販売している。 このプラントで処理されている廃棄物は、以下のようにさまざまなものがある。鉄道の枕木、電信柱、1930〜40年代に建設された工場の床材といった、汚染された木材。包装材の廃棄物。ドイツでは、包装材のリサイクルが義務付けられているが、分別しきれず残った混合プラスチック、シャンプーの容器、ヨーグルトの容器といったもの。さらに、下水処理場の汚泥。SVZ社が受け取るときには、八八パーセント固形分に乾燥させたものを、ブリケット状にプレスして使っている。さらに普通の生ごみや灰など家庭ゴミも使っている。
写真:ジェネレーターで燃焼できるよう前処理された、乾燥させた下水汚泥、家庭ゴミ、木材など
そういった廃棄物をガス化ジェネレーターに入れる前には、必ず前処理する必要がある。2〜8センチの一定の大きさの固まり、ブリケットに似た形のものにプレスする。枕木のようなものなら、シュレッダーで同様の大きさに粉砕して使っている。鉄はマグネットで回収する。
2×1×1m程度の大きさにまとめられて運び込まれた家庭ゴミ
ゴミをベルトコンベアに乗せる
ゴミは細かく砕かれる
ゴミを10cm角のブリケット型にプレスする
右側の屋根に青い縁取りのある建物が家庭ゴミのブリケット型加工施設
廃棄物の引き取り価格は、市場で決まる。ドイツの法律では、廃棄物の所有者はお金を払って処理する必要がある。SVZ社の他にもこうした廃棄物処理施設があり、そうしたところと競合している。 固形廃棄物のガス化を行っている固定床のジェネレーターは、径が3.6、高さは9メートルで、25五バールの圧力がかかっている。 ジェネレーターの模型
ジェネレーターの下の部分を閉めた状態で、上から廃棄物を入れる。ガス化する際には、酸素と水蒸気の混合物を下から入れる。下の部分が回って、廃棄物が回る。ジェネレーターの中はいくつかの層になっており、それぞれ温度が異なっている。
製造したメタノールを一時保存する貯蔵タンク
同社の工場敷地内には、旧東独時代に引いたガス輸送用の鉄道の線路がはりめぐらされている。
工場施設内に張り巡らされている鉄道の線路
製造されたメタノールは貨物列車で搬出される
現在同社では、できるだけ廃棄物の最適な混合比で燃焼を行っている。50パーセントがプラスチック、15パーセントが木材、一五パーセントが乾燥させた汚泥、残りの20パーセントはその他という構成である。 市場で決まる廃棄物の引き取り料は、平均でトンあたり200マルク(約1.2万円)程度、木材なら80マルク(約4800円)程度である。プラント内には、ガスタービンの発電機(75メガワット)もあって、これらプラントで使う電力を賄い、余剰があれば売電している。また、プラント内で発生した蒸気も熱として販売している。 SVZ社の収入における引き取り料とメタノールや電力などの販売額の比率は、引き取りが6割、販売する方が4割程度。引き取り料をもらわないと、採算が取れない。少なくともドイツでは経済的に無理である、とのことだった。 SVZ社のこのプラントは、先進国においてバイオマスをエネルギーおよび原料として利用するには、廃棄物をその処理費込みで利用すれば、経済性を追求することが十分可能であるという証拠になると言えよう。なお同社は、この技術を他社にライセンスすることは可能であると答えている。 *SVZ社のホームページ(英語の説明あり) http://www.svz-gmbh.de/ |