エタノールの利用 廃材や古紙からエタノールを製造する技術


 しかし、バイオマス産業社会のあり方を考えるなら、食糧と競合するサトウキビやトウモロコシ、あるいはサツマイモなどから自動車燃料となるエタノールを大量生産することには疑問が残る。
 その点、米アルケノール社や、日揮株式会社が開発した廃材や古紙などセルロース系の原料から工業用エタノールを製造する技術は、食物と競合しないという点で注目される。バイオマスに硫酸を混ぜて加熱して、糖にし、「クロマトグラフィー分離法」により、糖液をとりだす。クロマトグラフィー分離法は、糖と硫酸が樹脂に吸着する強さの差を利用したものである。取り出した糖液を、米国立再生可能エネルギー研究所から提供された遺伝子組み替え微生物で発酵させる。杉の廃材1トンから約250リットルの工業用エタノールが得られる。
 利用できるバイオマスは、稲わら、バガス(サトウキビのしぼりかす)、トウモロコシの茎や芯、果実の皮、雑草などの農業廃棄物、木くずなど林業廃棄物、製材所から出る廃材、建築廃棄物、古紙、生ごみなど多岐に渡る。
 実用化のためには、収率をさらに向上させることや、個々の原料の特性や問題点をクリアしていくこと、遺伝子組み替え微生物を利用することについての消費者の疑念を払拭することなどが必要と考えられるが、建築廃棄物など、高額の費用をかけて処理しているものを処理する方法として、注目されよう。

 もし日本がバイオエタノールを導入すると、二酸化炭素の潜在削減量は3億1400〜7億4400トン/年(CO2換算)、削減できると見込まれる。また、既存のインフラが使えるため、短時間での導入が可能である。
 京都議定書の規定を対応する当たって、バイオエタノールの自動車燃料への導入は、実現可能性の高い選択肢の一つであり、そうなれば、巨大なエタノール市場が日本に誕生することになる。その一部分でも、現在処理に困っている産業廃棄物、農業廃棄物の出口となるなら、非常に有望な選択であると言えよう。